6.実験的要素が強い印象があるが、構図を意識したカメラワークが素晴らしい映画。二人の男が歩きながら会話をする。カメラは二人の正面を見上げる位置から移動撮影。すると別の声が入る。二人の姿を支点にカメラは上昇し部屋の奥にいる声の主を二人の男の真ん中に収める。その次は娘の部屋での会話をカメラが捉え、ゆっくりと寄ってゆく。寄り切ったとき、会話する二人の男女は画面の左側に配置され、、たと思ったら右側にある鏡に給仕係が登場し、去ったあとに二人を真ん中に収める。という具合に他にも多々見受けられる長回しの中で的確な構図を作り出すカメラワークが実に面白い。この作品は『エレメント・オブ・クライム』『エピデミック』に続くヨーロッパ三部作の1本ということらしい。内容はともかく、どうもトリアーは観客がドラマにのめり込まないようにしたいらしく、後の作品もなんらかの方法を用いて冷めた視点を強要していますが、この作品ではオープニングとエンディングの催眠術がその役割を担っているのだと思う。それでものめり込みそうになると、常に先回りするナレーションが邪魔をするという二重構造。この監督の映画は彼の思想的なものに目がいきがちだが、ユニークで大胆な仕掛けにこそ興味をそそられる。 【R&A】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-12-22 16:06:25) |
5.トリアーはこの作品以後、執拗に「アメリカ」をテーマにした作品を取り続けていくわけだけど、そのことを念頭において見てみると、アメリカに移住したドイツ系移民である主人公が終戦直後のドイツに戻って寝台車の車掌になるところから始まるこの映画もアメリカとヨーロッパの違いを強く意識していることは疑い得ない。靴を磨いたかどうかを靴の裏のチョークのしるしで判断する乗客と、靴が磨かれているかぐらい靴を見ればわかるだろという主人公の台詞が面白い。言葉を重視するドイツ。事実を重視するアメリカ。トリアーがどちらの見方を支持するのかは定かではないが、ナチ体制を許したドイツ人の思考を痛烈に皮肉っていることは確かだ。事実を見ればナチなんてどこからどう見てもおかしかったはずなのだと。この台詞のやり取りだけで十分7点。あとのロマンスやサスペンスはこの題名において評価の対象とはなりえない。そう思う。 |
4.訳わかんない映画だ。何が言いたいんや!ナチも米軍も一緒って事かい?戦争は結局勝たないとだめなんだよね。表に伝わる”歴史の事実”とされるものは勝者のみの歴史として語られのですから。しかしホントに面白くない映画だ。この監督の映画は相性の善し悪しではっきりする映画ばかりだ。 【亜流派 十五郎】さん 1点(2004-10-06 18:14:40) |
3.これもワケワカラン系の映画ですけども、見せ方が上手ければ私ごときでも結構引込まれてしまうという一例です。線路が流れる映像に乗せて、マックス・フォン・シドーが催眠術をかけて来る。気がついたら、観る者は主人公の車掌見習いケスラーと同化している---って程うまくは行きませんが、全体的にちょっと銀色っぽいようなモノクロ映像に乗せて現れるイメージの数々、不安や焦燥感を誘います。一部カラーを交えるのは、こりゃまあ前例が無けりゃずっと強烈なインパクトあったんでしょうけど、それでも映画が単調にならないようにするのには確かに効果的ですな。この映画全体が一種の「悪夢」、しかし恐ろしい事には、どこまで行ってもその悪夢から覚めることはできない。むしろ「列車が止まった」ところから本当の重苦しい悪夢が始まるのか?死者から生者への冷たい視線で作られたような不気味な作品です。 【鱗歌】さん 7点(2004-02-01 17:04:21) |
2.まだラース・フォン・トリアーがドグマを取り入れる前の作品ですが、いきなりの催眠術風語り(『あなたは、今ヨーロッパにいる』というナレーションによって、観客と主人公を同化させる)や、モノクロ(パートカラー)のコラージュ的映像など、彼の「鬼才」ぶりがひしひしと伝わる作品でした。物語は第二次大戦直後の米軍統治下のドイツを舞台にしていて、ラース・フォン・トリアーのアメリカに対する独特の拘りを感じさせるし、現在のイラクの状況と比較すると興味深いものがあります(あと、この作品を今の時期に放映したBS-NHK担当者の意図も感じられる)。映画の中のナチといえば文句なしの「絶対悪」として描かれることが多いし、実際ポーランド侵攻やユダヤ人に対する迫害・虐殺は許しがたい犯罪ではありますが、そもそもナチが生まれた背景には第一次世界大戦における戦勝国の無茶な補償要求もあったんですよね。そういう、何が善で何が悪なのか決め付けることができない状況の中、なす術もなく運命に飲み込まれていく主人公のラストは衝撃的でした。 【ぐるぐる】さん 7点(2003-12-23 15:12:21) |
1.ぶっちゃけて暗い映画だとは思うんだけど、独特のムードは捨てがたいものがある。白黒とカラーが渾然となったり、コラージュっぽい合成を駆使したり、斬新な映像も新鮮である。クライマックスもなかなか見ごたえあり。 【3Mouth】さん 7点(2002-05-15 00:11:06) |