5. 南に「ひめゆりの塔」あれば北に「氷雪の門」あり、か。
1945年8月、日ソ中立条約を無視しソ連軍が樺太を侵攻。ソ連の攻撃を受けた住民たちの逃避行と、最後まで通信を守ろうとした女性電話交換手たちの悲劇を描く。
旧満州では、ソ連軍によって悲惨な境遇を送った日本人たちの話がよく知られている。当時の苦難は宝田明など映画人の証言でも見聞きした。それに比べると樺太での苦難はあまり知られていないように思える。
概ね史実に沿った演出であり、樺太が地理的に戦地から離れているため当初は住民が楽観視していたことがよくわかる。次第に戦火が近づく中で葛藤する交換手を演じる女優陣の演技は当時の緊迫感を漂わせている。交換手たちも早く逃げれば済むことであるが、いざという時に使命感をみせる人はいつの世にもいる。たとえば天災の時など。
海上の戦闘シーンは特撮がしょぼくて残念。ラストの平和へのメッセージはとってつけたような印象で心に響かない。