2.愚かな大男の、哀しい人生だ。この男の考えの浅さ、お調子者な浮かれっぷり、いるよなあこういう奴。飲み代をたかりに周囲をとりまく忌々しい連中。こいつらのせいで、ジッポの愚かしさが際立っちまう。
悪い奴じゃないんですよ、ちょっと足りないだけなんだ。この男を追い詰める貧困とアイルランドの寒さがやり切れない。
おそらくセットで撮ったであろう霧深い街角の陰気な湿っぽさなど、カメラを通して伝わる臨場感が古さを感じさせないのは凄いなあ。警察が押し寄せた際の階段の乱闘シーンのカメラアングルはちっとも古びていない。初手からラストまで、流れるようなカメラワークは観やすくて、何気に卓越したセンスと思う。さすが巨匠。この作品で初オスカーだったとは、意外でびっくり。