8.父と母、娘二人の四人家族の構成だが、互いに秘密が多く、意思の疎通ができていない。
いや正確に言うと、父親は娘達に対して歩みよる姿勢を見せていて、秘密もないのに、娘二人はというと、互いに秘密を持ち、父親に対して全てを開けっぴろげにしていない。
家族という形はありながらも、内実はバラバラで、秘密だらけ。
でも、現代の家庭の姿を考えると、今ではそれがむしろ普通だったりするわけで、身につまされるものがある。
しかも、離婚や別居なども出てきて、まさに現代を予見したかのような内容に、現代劇における小津の凄さを感じずにはいられない。
そういう意味で、本作は大人向けの映画であり、子供の目線から見ると理解できない作品かもしれない。
逆に、結婚を経験し、子供も居る大人から見たら、たいそう怖い内容で、現実的な恐怖感を煽られる様な思いである。
キャスティングに目を向けると、原節子・笠智衆の親子はおなじみとして、有馬稲子の陰鬱な目つきが印象的。
エリート役を演じさせるとしっくりくる中村伸郎の、雀荘オヤジ役はややミスキャストか。
三好栄子は、平民の汚いおばちゃんというイメージがあるので(失敬)、本作の女医役が意外にもはまっていて、これには驚いた。
演じようと思えばどんな役でも自然にこなせるという、三好栄子の実力を垣間見た気がする。
山田五十鈴・原節子の母娘は、歳の差に違和感をおぼえた。
親子ほどの年齢差ないでしょ、って感じ。