10.生とは何か、生きる上で何が許されるのか。多分に観念的な原作小説では、その問いがさまざまな形で問われ続けますが、一方で、むせ返るような空気、飢餓、人肉食といった極限状況を描き、観念性と生々しさが見事に同居した作品となっておりました。それを映画化する難しさ。 よってここには当然ながら映画らしいアレンジがあり、主人公の田村一等兵の意識や思索といったものは抑制されていて、どっちかというと何も考えてなさそうな(笑)船越英二が主人公を演じ、ただただ、目をぎらつかせている。そして、周囲の人物の描写が比較的多く取り入れられていて、平凡な人たちの異常な体験、という印象が強くなっています。その彼らの、あまりにあっけない死。 芥川やっさんのロシア音楽みたいな映画音楽、確かに異境の感じを出してはおりますが、もう少し音楽の挿入自体を控えてもよかったかと。いささか過剰な気もしました。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-08-11 10:05:08) |
9.現地人との会話(タガログ語?)シーンに字幕がほしい。肺病の主人公がタフ過ぎるが、痩せ細った体に伸び放題の爪や髭、負け戦の無気力感と究極の飢餓感が生々しい。サルの肉と偽りながら生き延びる。強烈な生存本能が平時の非常識を極限状態の常識とまでは言わないが選択肢の一つにしてしまう。実体験がないとなかなか理解し難いが。 【ProPace】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-11-19 23:01:12) |
8.モノクロだからはっきり分からんかったんやけど、狂った将校 う○こ食ってた??? 【ケンジ】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-04-23 17:10:43) |
7.戦場を描いていながら、ドローンとした無気力感が全編を覆っている。善玉であれ悪玉であれ、今まで描かれてきた日本軍兵士のイメージとはまったくかけ離れた、だらしのない・みっともない人たち。船越英二、滝沢修、ミッキー・カーチスといった配役の妙。人肉喰いという苛烈な状況を描いても、この監督はユーモア感覚を忘れない。要領の悪さなどを笑わせていく。まあこれがだらしのなさにも通じていくんだけれども。とにかく思想性を抜きにした戦場を描いたということで価値がある。そこから戦争という状況がいかに異様なものであるか、さらにこういう軍隊が必要とされる近代国家がいかに不気味なものであるかが、見えてくる。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2009-10-05 11:56:06) |
6.鬼気迫るものを感じることはできなかった。犬をなぜ食べなかったのだろう 【みんな嫌い】さん [DVD(邦画)] 6点(2009-05-03 20:48:08) |
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5.言わんとするところは分かるのですが・・・平坦で流れのない演出と、危機感や切迫感の感じられない各演技が何とも気になって仕方がない。登場人物は飢餓と疲労で追いつめられているはずなのに、表情や台詞や会話はえらくしっかりしているのです。結局、原作の力とロケの映像力に寄りかかってしまったのではないかという感じ。 【Olias】さん [DVD(邦画)] 5点(2008-12-23 01:14:36) |
4.原作の内容は衝撃的ですが、この映画も決してその衝撃度を下げていないと思います。白黒の映像がより生々しさを出していると思います。多少セリフが説明的、棒読みの箇所がありますが、欠点を補って余りある内容でした。 【くろゆり】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2008-02-10 21:46:58) |
3.太平洋戦争末期の日本兵の過酷な状況がよく描かれている。そして、何よりも才気溢れる演技が凄み、迫力で観ていて圧倒される船越英二がとにかく怖い。怖い。もう、本当に人間は食に飢えるとここまでなるかというほどの恐ろしさがモノクロの画面を通して伝わってくる。人間が人間の肉を喰う。しかもそれが戦友の肉という恐ろしさ、けして、楽しい映画でもないし、感動的な映画なんかでもない。そこにあるのはひたすら人間の苦悩、恐ろしさであり、色んな意味でずしりと重い映画である。 【青観】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2007-03-24 11:29:22) |
2.肺病を患い原隊からも病院からも追い出され行き場を失う田村。やがて原隊は無くなり、降伏選んだ人間は死んでゆく。現地人を殺し生き延びた田村、仲間を殺し生き延びる他の兵隊。人肉を食らうというのはショッキングではあるが倫理観以外にどんな違いがあるのだろうか。人間が人間らしく生きるというのは大切ではあるが、極限の精神状態、極度の飢餓状態に於いてどこまで人間であり続けられるのか、体験した人間以外が善悪を決める権限は無いのではないだろうか。 【亜流派 十五郎】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2005-05-08 12:10:40) |
1.《かなりネタバレ》戦争が引き起こす狂気はこのような形でも表れる。太平洋戦争末期、ビルマやニューギニアなどの南方戦線に於いて、日本兵が飢えに耐えかね人肉を食って生きながらえたというのは有名な話です。規律や統制も、目的も何もない日本の敗残兵達は敵弾に撃たれまいとただ逃げ惑うだけ。しかも口にする物が何もなく、心身共に極限まで追い詰められ次第に精神を侵されてゆく。となると、当然のごとく人肉を食うか食わぬかの選択に迫られる。この極限状態に於ける人肉食い。生き残るため死人の肉を食うことが許されるのか否かは、人により分かれるところであろう。しかし現地人や同胞の日本兵を殺しその肉を食らう。(おそらく死肉は暑さで腐敗がひどく食えず、新鮮な肉を求めた結果がこれであろう) 疑心暗鬼も手伝い文字通り食うか食われるかの世界であり、もう完全に狂ってしまっているとしか思えない。そんな日本兵達だって、元をただせば我々と同じごく普通の人間だったはず。原作は実際に兵隊としてフィリピン戦線を体験した大岡昇平で、監督市川崑による演出。全編オープンロケが放つ印象的なシーンの数々に絶望的な雰囲気描写。そして、ジワジワと身の毛もよだつラストに向けての展開の仕方もさすがだ。反戦という帰着するもは同じものの、情感豊かに描いた同監督による戦争映画の名作「ビルマの竪琴」(56)と対照的な作風と結末。監督市川崑の偉才振りが窺える、戦争の狂気をえぐり出した傑作です。 【光りやまねこ】さん 10点(2005-02-19 11:05:10) |