8.いろいろなことが億劫でもやもやする夜に観たい映画は、凝り固まった主観を解放してくれるような壮大なSFか、自分の日常生活からは遠い骨太の社会派ドラマであるような気がする。
昨夜はそんな夜だったので、帰宅途中にレンタルショップに寄り古い名作を揃えているコーナーからこの映画を選んだ。
ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺事件については、様々な陰謀説が存在することも含めて一応知っているつもりだが、残された多くの謎と合わせて、時代背景やJFK自体の人となりも詳しくは知らないので、あくまで近年史に残る最大級のトピックスだという認識の範疇を出ない。
ずうっと前にオリバー・ストーンの「JFK」も観たが、僕自身が子供だったので内容は殆ど覚えていない。
そういう“知ってるつもり”な事件の「裏側」のみを描いた今作は、あらゆる意味で衝撃的だったと言える。
残されたあらゆる謎と矛盾と証拠を集めて描かれる陰謀の様は、非常に説得力があり、暗躍する黒幕たちがあまりに淡々と時代の寵児となった自国大統領の暗殺を画策する様子は、リアリティが増すと同時に重々しい恐ろしさを感じた。
結局のところ何が真実なのかということは分からないけれど、歴史に残る自国の負の事件の事実を突き詰め、たった10年後に一つの映画としてエンターテイメント化してしまうアメリカという国のパワーは、善し悪しは別にして「とんでもないなあ」と思わずにはいられない。
ラスト、総てを終えた陰謀の中心人物が平然とビリヤードに興じる様が、正義も悪も超越した人間のおぞましさを表しているようで、とても恐ろしかった。