112.ファンタジーでもなければSFでもなく、ストーリーだけを見れば実写でも普通に撮れる内容であるため、アニメっぽいアニメを期待する層にはとっつきが悪く、そのあたりが理由で現状ややマイナーなアニメだと思いますが、未見の人には特に年末にぜひ見てほしい素敵なアニメです。
という事で(未見の人が読んでも大丈夫なように)ネタバレ無しでレビューを書きます。
唐突ですが、ある日ふとラノベ作家にでもなろうかなと思って世の中に数多ある「ラノベの書き方」系の本を読んでみると、どの本にも共通して同じことが書かれている事に気がつきます。
「ラノベで何よりも大事なのはキャラクター。何より重要なのは魅力的なキャラクターを生み出す事」
これ、ラノベ創作のどの入門書にも書かれている事なのですが、これって別にラノベに限らず映画やアニメにも同じような事が言えると思うわけです。
そして、このアニメ「東京ゴッドファーザーズ」の良さを考えたとき、まず第一に挙げられる点がまさにそのキャラクターの魅力だと思います。
主人公3人の「いかにもステレオタイプでありながらちゃんと映画的にデフォルメされたキャラ」こそがこの映画の肝だと思うのです。
3人の中でも個人的に特に魅力的なのは、家出高校生のミユキ。
他の2人にめんどくさそうにかつ的確に突っ込みを入れていくおいしいキャラですが、アニメならではの劇中の細かい表情の動きが本当に魅力的です。
そして彼女の魅力をさらに高めているのが、アニメの声の仕事はこの映画が最初で最後だった岡本綾。
彼女のいかにも何か世をひねたようなテンションの低いボソっとした突っ込みがいかにも家出しそうなリアル女子高生らしさをこのキャラに与えていると思うのです。
売れている女優が(おそらくビジネス上の理由で)アニメの声を演じる場合、往々にして事故にしか思えないような現象が起きてしまうわけですが、この映画での岡本綾の起用は見事に成功してます。
ストーリー面を見ると、90分強の短い映画ながら、途中ゆるむところのないアクティブかつスピーディなストーリー展開で最後まできっちり見せてくれますし、さらにそこに日本のアニメならではの細かい演出が積み上げられていて絵としても楽しませてくれていて、要するに完成度が非常に高い造りになっています。
そして劇中に登場する東京アルアルないろいろな風景。アニメで東京の風景というと最近では「君の名は。」があるわけですが、あちらをオモテの風景とすれば、この映画の東京の風景はまさにウラ。劇中で見せてくれる東京のいろいろな表情も東京好きにはたまりません。
キャラもよくストーリーも演出もよく…さらに心も暖まるというという小粒ながら完成度の高い作品ですから、まだこのアニメを見ていない方で、クリスマス~年末に何かほんわかする映画でも観たいなぁ、なんて思ってる方には強くお勧めできる一本です。
それにしてもこの映画が作られたころ新宿中央公園に確かにあった沢山のホームレスの段ボールハウスも今は存在せず、この映画の頃は売れていた岡本綾(いろいろあって)いまは芸能界を引退しています。
本当に月日の経つのは早いものですね。