1.たぶんビデオ・DVDは存在せず、今じゃ滅多なことで、TV放映もないと思うのですが、あえて紹介させていただきます。日本未公開でTVでのみ見られたこの映画、映画史的にはあのリチャ-ド・ドナ-監督の劇場映画デビュー作として知られるのみ。題名に「宇宙船」とありますが、これは新型戦闘機のテストパイロットを描いた、ほとんど『ライトスタッフ』の元ネタみたいな内容であります。多分テレビ局が大幅にドラマ部分をカットしたからでしょうか、テストパイロットたちの飛行シーンばかりがあたかも記録映画のように淡々と描かれ、その緊張と恐怖に打ち勝とうとする彼らの精神状態が実にリアル。その一方で、成層圏のどこまでも蒼い空(クライマックスでは、あまりに高く飛行したために、星すらが見えてくる…その詩的なこと!)を切り裂いて飛ぶテスト機の姿は、一種官能的なまでに美しい。思えばドナ-監督は、やたら建物をブッ壊すとともに、「飛行するもの」を好んで作品に登場させるのですが、その“原型”的なイメージがほとばしっているあたり、やはりデビュー作ならではの興味深さがあります(もっとも、この「単なる娯楽映画の担い手」ぐらいにしか思われていないドナーに、いったいどれだけの人が「作家性(!)」を求めるのか疑問ですが…)。テストパイロットのひとりに、あのチャールズ・ブロンソン。途中で事故死するけれど、儲け役です。そして若き日のメリー・タイラー・ムーアが、パイロットの妻役で出演しているのもうれしいところ。ともあれ、リチャード・ドナーを「実は偉大な映画作家」とひそかに信じている小生にとっては、ズタボロのカット・吹き替えのテレビ版であろうと忘れ難い1本なのです。