3.《ネタバレ》 この映画は、愛のドラマでもあるし「狼の時刻」のようなホラーでもある。
水の激しい流れで各章は始まる。
まるで人生が流れるように、2年かけて一つの家族のドラマを群像劇風に描いていく。
プロローグのアレクサンデルの幻視体験と一人舞台に始まり、聖夜(性夜)の祭り、家族の死、家族の再婚、新しい生活とアレクの受難、主教の苦悩とアレクの悪夢、そしてエピローグの新しい命の誕生。
冒頭のアレクが見る幻。動くはずのないものが動く恐怖、死神が予告する死の恐怖。
愛情をまんべんなく注く父親や母親。
子供達に文字通り“臭い”ジョークを飛ばして愉しませる。オナラでろうそくを消すシーンは爆笑。
愛情が注がれた子供達は、メイドと枕を炸裂させて聖夜を楽しんでいる。
うら若き母親と中年気味の父親もベッドを粉砕するほど性夜を(ry
そんな楽しき夜も、父親はもっと身近に家族達といたいと嘆く。まさか不幸な形で彼の望みが現実になるとは。
父親の代わりとして現れる、悪魔の様な主教がアレクを苦しめていく事になる。
母親は子供達を養うために止む無く再婚を選ぶ。
主教も厳しく子供達にあたるが、それも新しい父親として子供達を立派に育てようとする想いが空回りしているのかも知れない。
舞台の装いを止めさせたのも、父の死という辛い記憶から残された人々を解放しようとしての事だったのかも。
だが、アレクは憎悪を抱いてしまう。
冒頭の動くだけの人形は、人の化身となってアレクの話し相手となる。
亡き父親もその一人として彼を見守る。アレクは未だに前の父親が忘れられない。
それはアレクの寂しさ故だ。妹のファニーがいるだけじゃ寂しさは収まらない。ただ家族の愛に飢えている。
しかし、見守るだけで彼を直接助けようとはしない。
「いるだけならさっさと成仏しちまえよっ!」とばかりにブチ切れるアレク。
主教の家を焼いた業火は亡霊が放ったのか。それとも単なる偶然なのか。それは解らない。
アレクは自分のした事を悔やむ。本当に祈った事は、こんな事じゃなかった。ただ暖かい愛が欲しいだけだったのに・・・。
クライマックスは、新しい命の誕生、主教とアレクが“再会”するシーンで締めくくられる。