2.《ネタバレ》 あの「ヴァンゼー会議」を対象とした作品です。導入部は、いかにもクセのありそうな登場人物が順次集結していながら、今ひとつ誰がどの立場を代表しているのかがはっきりしないし、さほど個性も感じられない。しかし、あらかじめアイヒマンが会議終了時間も想定していたとおり、いざハイドリヒがまとめにかかってからは、丁寧に意見を聞いている(ふりをする)進行をしていながら、実質的には異論を許していない。たたみかけるような着地です。しかし実は一番ぞくっとしたのは、その後、いつもどおりに後片付けをする使用人や料理人の作業の描写なのです。別に何か悪魔の力が働いたわけではない、あくまでも事務的に慣例的に設営されたいつものような会議において、数多の人々の生死を左右する重大な決定が粛々と淡々となされていく。それがこの作品が言いたかった内容なのでしょうし、だからこそ、単なる歴史上のエピソードの再現ではなく、今日にも通用するテーマとしての普遍性を有しています。