4.《ネタバレ》 原題での「二十四城」は四川省成都市にあった大規模工場の移転に伴う再開発プロジェクト上の地区名であり、これは後半になってやっとわかる。要は近年盛んに行われてきた都市開発の一環ということらしい。
登場するのはこの工場に関わった人々限定だが、背後にはこの国全体に関わる大きな歴史の流れが感じられる。かつて軍需工場だったことを語るエピソードの背景には昔の軍用機(Q-5、J-5、J-7?)や、核弾頭搭載可能な弾道ミサイル(DF-2A)までが映っている。また中越戦争の話が何度か出るが、この国でも戦争中は特需があって終わると不景気になるというのは社会主義礼賛世代にとっては皮肉な話だろう。さすがに天安門事件の話はなく、そのあたりから時代が少し飛んでいる印象があった。
ところで時代の移り変わりに関して個人的に最も感慨深かったのは、終盤近くで老人が歌う「インターナショナル」に続いて詩が引用される場面だった。いわゆる現代化の過程で都市の新陳代謝が進んで古いものが失われると同様に、人間に関しても古い世代はただ去るばかりという例も劇中には多かった(「外資系では…」など)。しかし最後の女性が前世代とのつながりを強く意識したところで終わっていたのは印象的なまとめ方であり、これで大感動とはいかないまでも一定の感銘を受ける構成になっている。
もっとも、この女性がいかにもその場限りの仕事で日々をつないでいたのはどうも将来が危ぶまれる気がする。2014年の現時点ではすでに不動産バブルの崩壊が噂されるご時世になっているが、それより少し前のこの映画にしても、これで本当にこの国の力強い発展を描こうとしていたのかよくわからないところがある。
なお余談だが、「小花」役で出ていた女優は実際に劇中の映画「小花(戦場の花)」(1979)でヒロイン役をやったジョアン・チェン(陳冲)本人であり、ここはいわばセルフ・パロディのようになっている。若い頃はなかなか可愛かったようだが、その後は役者のほか映画「シュウシュウの季節」(1998)などでの監督もしている。この人が劇中で語っていた若い男の写真の話はけっこう切ないものがあった。