22.《ネタバレ》 休日の深夜、この映画を観て就寝した。
すると、この映画に満ち溢れる「不安」を如実に反映した夢を見て、非常に目覚めの悪いウィークデーの始まりの朝を迎えてしまった。今も、どこか気怠く、眠い。
韓国映画には、その善し悪しは別として、ねっとりとまとわりつくような「不安」に溢れた作品が多い。それは映画のジャンルに関わらず、ドラマ、アクション、サスペンス、ラブストーリー、更にはコメディにまで至り、映画を生み出すそもそもの“根底”に備わっている要素のように思える。
何本もの韓国映画を観ていると、時にその“厭な雰囲気”に対して、嫌悪感を抱いてしまうことも多々ある。
しかし、もはやそれは韓国という国が発する文化性であり、外国の映画を鑑賞する以上、否定できないことだとも思う。
そして、その“厭な雰囲気”を包み隠さずぶつけてくるエネルギーがこの国の映画にはあり、それこそが韓国映画の魅力だと思う。
そのエネルギッシュな韓国映画界において、トップランナーであり続けているのが、今作のポン・ジュノ監督だろう。
力強く、美しい映像世界の中に、人間の滑稽さと愚かさを上質な情感をもって表現する術に秀でた彼の最新作は、“母親”が息子を愛する揺るぎない「本質」を生々しく、辛辣に描いた問題作だった。
殺人の容疑がかけられた息子を救い出すために、母親は雨の中昼夜を問わず奔走する。
そうして辿り着く真相、真相に対する母親と息子の言動……。
泥々としたミステリアスな展開の中で、ストーリーは二転三転する。
意外な展開に対してその都度息を呑むが、これがポン・ジュノの映画である以上、安直なカタルシスは得られない。
映画は、母親が無表情で踊り狂う様で、始まり終わる。
その様を、どういう心境で見られるか?この映画は、“厭な雰囲気”の中で、問答無用に問いかけてくる。