1.《ネタバレ》 結局なにが描きたかったのか、よくわからないんですが……。とりあえず、旧ソビエトの政治批判のために音楽を利用しただけだというのはわかりました。この利用した“だけ”というのが問題でして。
すでに指摘されているように、集められたメンバーにやる気がなさ過ぎ。それを感じさせるのは、職場に楽器を持ってきていることと、30年経ってもそれなりに弾けてるってことぐらいですか。しかし、それ以外の行動がひどい。
というか、この映画でのロシア人の描かれ方がひどい。ニセのオーケストラをでっち上げ、偽造パスポートで出国し、パリに着いたら蟻のようにギャラに群がる。しかもそのあと勝手に出て行ってリハーサルも無視。などなど、ギャグのつもりかもしれませんが、ロシア人でない私も不快なだけでまったく笑えません。近頃アメリカで、某国最高指導者の暗殺計画を題材にした映画が話題になっていますが、このニュースを聞いて私が思ったのは「どうせなら自国の大統領の暗殺計画を題材にすればいいのに」ってこと。この映画にしても、フランス人をもっと浅はかでバカに描けば、少しは笑えたかもしれません。いずれにしろ、異国の人間を映画の中でこれだけ悪意を持って描けるというのは、人間性を疑います。
で、そのムチャクチャ元オーケストラ団員ご一同様が、「レアのために」のメールで集まって、ソリストがレアの娘だとわかったとたんに張り切って演奏し出す。要するにこの人たちは、30年前の恨みつらみを晴らしたいだけのことで、音楽自体を愛しているとはとても思えない。とうか、そのように描かれていない。当然でしょう、「ロシア人なんてロクな連中じゃない」というのがこの映画なんですから。こんな、都合のいい時だけ「音楽やってます」なんていうのが、通用するわけないでしょう。こんなのは奇跡とかファンタジーじゃなくて、嘘っぱちです。
これ以外、共産党を茶化すあたりなども、お寒い限り。見られたのはアンヌ=マリー役のメラニー・ロランくらいのもの。あとは、終始これほど不快で腹の立つ映画も珍しいでしょう。こんなもんにくれてやる点数などあるものか。