2.この監督さんは群像劇として有名らしいが、何十人も登場人物を出演させて、どうでもいいダラダラとした会話を聞かせるのが群像劇というものなの?「どんなジャンルでも、映画は観客ありきのエンターティメント性を備えているべき」と思っている自分にとっては、こういう高尚な主張を押し付けられるような「文学的作品」は全く合わない。
金持ちのパーティという舞台設定はいいとしても、とにかく登場人物が多すぎてワケ分からん。感情移入どころか、人物整理もままならず、観客をほったらかしのまま話が進む。まさに「見知らぬパーティ」に紛れ込んでしまったような疎外感が非常に不愉快。
自分にとって「感情移入出来ない」という事は、「物語にも没入出来ない」という事。そのくせ序盤から語られる事の多くは、「誰々が婿養子になった」だの、「誰々はゴマすりだ」といったような、こちらにすればど~でもいい、メイドや執事のグチや、金持ち連中の噂話や仕事話ばかりで、もう聞いていてウンザリ。「ディテールの積み重ね」と言うが、こんな下らない話はいくら積み重ねても、それは「どうでもいいものの積み重ね」にしかならないと思う。
ストーリーは1時間近く経っても特に何の事件も起こらないまま、つまらない会話がダラダラと続くだけ。基本的に外部との接触が出来るため、閉鎖空間特有の緊迫感も無い。
仮にミステリーとして見ても、登場人物が多すぎるため、「いつ」「どこで」「誰が」「何をしていた」という正確な情報が把握出来ない(もっともそんな情報から論理的に結論を導けるような脚本構成にはなってないが)。
かと言ってドラマとして見ても、「群像」形式であるため、必然的にひとりひとりの人間描写が薄っぺらくなり、「誰が」「どういう動機で」殺人を犯そうが、見ているこっちにしてみたら、「あっそ」という程度の感覚しか持てない。実際、真犯人も別に意外性がある訳でもなく、動機もありがちだし、おまけに暗い。
上流階級と下層階級による社会構成の危うさとか、それにより齎される悲劇とか、そんな問題提起は自分にとってはどうでもいい事。 大昔の文学じゃあるまいし、自己満足的な社会批判をする前に、もう少し観客を意識した映画作りをしてくれ。