1.今のところ0点を付けておられる方と9点を付けておられる方がいらっしゃらないようですので、どちらにしようか迷ったのですが、9点にします。というのは勿論ウソですが、実際、評価が分かれやすい映画かとは思います。私も初めて見た際はそれなりに戸惑いを感じましたが、それはおそらく「『用心棒』をリメイクする以上は、どうかヘンな作品になってませんように!」とか妙なことを願いながら見ちゃったからで。いや、ヘンな映画、上等じゃないですか。どうアレンジしてくるか、という楽しさ。そもそも、仮に元映画をそのまんまリメイクで踏襲したらなば、それはリスペクトと言えるのか、それとも「作り直しの必要あり」という挑戦的なメッセージなのか?
ブルース・ウィリス演じる主人公、いまいち何がやりたいのかよくわからんのですが、その点に関しては元の『用心棒』だって、主人公の桑畑三十郎は飄々とするばかりでつかみどころのない存在。こういう謎めいたところがリメイク作としての可能性にも幅を持たせているような気がします。元映画のいかにも乾ききった舞台、そして最後の決闘。いかにも西部劇っぽいから、いったんは西部劇にパクられて新たな世界を繰り広げた訳ですが、今度はこうやって、ハードボイルドの側面を先鋭化させたギャング映画の世界として生まれ変わる。
映画全体がくすんだ色合いで描かれていて、いかにも非現実の世界を感じさせます。三文小説の世界、といってもいいかもしれませんが、とにかく現実感を削ぎ落したハードボイルド。どの登場人物に対し好感が持てる訳でもなく、ある意味、不毛ともいえるようなやりとりが続いていく。この一歩突き放したような「どうでも良さ」加減、初見時こそ戸惑いを感じたものの、今では本作の魅力だと思ってます。ジワジワと引きこんでいく感じ。
そこに、80年代のウォルター・ヒルの、「バイオレンス監督」という誤ったイメージ(?)の残り香みたいなものも感じさせる派手な銃撃戦が織り込まれていて、ブルース・ウィリスが二丁拳銃をぶっ放しまくれば、撃たれた敵はあり得ないくらい後方にぶっ飛んでいく。実際には銃弾で人間がぶっ飛んだりはしませんからね~。しかしこの、ケレン味が嬉しい。
成功作かと言われると、なかなかハイとは言いづらいのですが、独特の魅力が詰まったユニークな作品であることは間違いないと思います。