1.《ネタバレ》 淡々とした物語は、観る人によっては、消化不良な印象もあるだろう。台詞の少ない登場人物に退屈を感じてしまうかもしれない。しかし僕はこの映画は素晴らしいと思う。ラストシーン、ホームに陽子と肇、去っていく電車、そして流れ出す音楽、これには震えた。妊娠してシングルマザーで生きていくことを決めた陽子、その陽子に思いを寄せるも、打ち明けられず、ただ見守る肇、二人のおもいが確実に時間の流れとともに変化し、成長し、頼りないながらも未来へと進んでいく、その刹那をこのラストのシーンで感ずることが出来た。丁寧にとらえている東京の風景は、監督の愛情に満ちていて、懐かしさを感じさせるものである。小林稔侍さんの演技も良かった。台詞が少ないながらも、娘との微妙な距離関係をうまく演じていた。この映画は決して古臭くない。これから目指すべき作品だと思う。