1.オープニングの、屋外練習用リングの俯瞰から
窓際のベッドで魘されるジョン・ガーフィールドへと移るショットの暗く不穏な情緒が
秀逸で、映画後半に時制が戻る際に反復される同一構図のショットでは
そこに至るドラマの蓄積も相まって悪夢的イメージがさらに増幅されて印象深い。
リングサイド下からあおり気味に捉えられた実録風のファイトシーンの迫真と、
裏切りを知ったガーフィールドの狂気を帯びた表情が緊張に満ちた見事なモンタージュを象る。
負のスパイラルの中で主人公が葛藤するドラマのラスト、
観客を掻き分けながら駆け寄るヒロインの姿と、二人の後ろ姿のシルエットに
見る者も救われる。
助監督にはアルドリッチ。納得感がある。