1.《ネタバレ》 ガンファイターの孤独を描ききった名作。
私が西部劇を見直すキッカケとなった思い出深い作品です。
ヘンリー・キングというと「頭上の敵機」のような戦争アクション、「慕情」のようなドラマが素晴らしい作品がありますが、本作は人間ドラマを軸にした西部劇。
後にフレッド・ジンネマンが「真昼の決闘」という似たようなテーマの作品を撮りましたが、やはり「拳銃王」のドラマには及びません。
本作はアウトローとして名を挙げ無敵となった男の孤独をテーマにしています。
賞金首として保安官、仲間内からも命を狙われ続ける主人公のリンゴオ。
どんな敵も早撃ちで葬ってきたこの男ですが、ある日「別れた妻とよりを戻そう、もう人を殺すのはやめよう」と無性に故郷に戻りたくなりました。
死と隣り合わせの毎日、いくら人を殺めても満たされない心・・・リンゴオは故郷に癒しを求めます。
グレゴリー・ペックの人間臭い演技がたまりません。
「白昼の決闘」における悪童といい、西部劇におけるペックは野性的な魅力を感じられます。
そんなリンゴオですが、街に戻っても既に賞金首として知れるリンゴオは「危険な人物」か「賞金」にしか見えません。
何処に行っても命を狙われる宿命・・・それでもリンゴオは昔の仲間や街の人々との交流を経て「普通の人間に戻りたい」と努力を続けます。
リンゴオが時折見つめる時計。秒針を観客に見せないのが良いですね。リンゴオにしか解らない焦りと苦悩を感じられます。
殺し合いからの解放、わだかまりがほどけていく夫婦・・・リンゴオの「殺し」が冒頭で終わっている部分も印象的です。
しかし運命はリンゴオの死がまっていました。
いくらリンゴオ自身が変わっても、彼を「賞金首」でしか知らない者は絶えず命を狙いにやって来る・・・残酷なものです。
それでもリンゴオは一瞬とはいえ、本当の人間として生をまっとうしたのかも知れません。
悲しい結末でしたが、その生き様は強く胸を打つ映画でした。