1.《ネタバレ》 なんて見事な映画なんだろう。終映後まずそう思いました。
托卵のシーンからやられました。初めは「狡賢に生きる」ことの象徴かと思いましたが、「家族の崩壊と破壊者」の象徴の気がします。
夫の浮気が切っ掛けで崩壊する3つの家族。それに関わる女性描写がものすごく見事でした。特に長女と次女の心情に共感できたので、この映画すごく楽しめました。
母親と長女が夫の裏切りを知った時にとった行動の違い、長じて破壊者となる三女、おそらく父を死に追いやった罪悪感を抱えているために自己評価の低い次女、全てを拒絶する母親。どの人物にもリアリティがあり、最後の母親のセリフにも説得力がある。
その中でも長女は立派でした。私もああいう行動が取れるようになりたいです。
運命と偶然、王女メディアの例えなどイマイチ理解できない部分もありましたが、ずっと心に残る映画になりそうです。
ただ女性に比べて、男性描写がないのは残念でした。またキェシロフスキの映画が好きな私には、演出過多でした。サスペンス調な演出や音楽はこの脚本を損なっていると思います。なので-1点。プレイスネルの厳しくも透明感のある音楽とキェシロフスキの淡々とした映像で見たかった~と心から叫びます。