1.《ネタバレ》 もがきながら生きる様が、抑えた演出と高い演技力により、リアルに伝わってきました。お姉さん、決して負けてなんかいません。不倫はいただけませんが、事業を起こすバイタリティがあり、夫に自殺され憔悴した老婆の手を、眼に涙を浮かべながら黙って握りつづけるやさしい人でもあります。自身の深い傷と重なり、人の痛みが解るのです。十分すぎるほど素敵な人じゃないですか。だけど妹もいい。姉の息子であり、私生児である甥が「私生児ってな~に?」と聞けば、「今に解るけどそれって最高にかっこいいこと。バスタード(私生児)ってバンドを組めばモテルわよ。最高にクール。」と言い放つセンスとやさしさ、それでいて反社会性を持ち、押し寄せる心の闇に悲しい眼でたたずむ妹のほうが、個人的には好みなのですが(笑)。登場人物達のその後はこちらの想像に任せる終わり方をします。簡単にまとめるようなことはしません。そのことがそのまま簡単にはいかない人生の複雑さを表しているような気がしました。街いく人達を眺めながら、それぞれに何かを抱えて生きているのかもしれないなと改めて思わせてくれる映画でした。