5.今風の映画のように何がどうしてこうなってと目まぐるしく展開を詰め込んでいるわけではない。ストーリーだけ取り上げればたぶん『世にも奇妙な物語』だったら20分でやってしまうような内容。しかしこの映画の素晴らしさはその醸し出す雰囲気。ジーン・ハックマンとともに何とも言えない不安感の中を漂う。これこそ映画的な映画だ。 【とと】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2009-08-18 01:57:13) |
4.どこか無気味な不条理感の漂うサスペンス。このキモチワルサはどこからくるのかと言うと、おそらく、“盗聴”という題材からくる、「“音”に対する過剰な意識」と、それに伴う「“音”と“映像”の乖離」と言えるだろうか。いやとにかくキモチワルイ。「盗聴」という、現実から音を切り取る行為。“音”が現実から切り離され、ひとつの存在であることを主張し始める。一方、音を切り取るための盗聴装置の映像描写、その装置の精巧さがもたらす現実感。“現実”と、“現実”を脅かし始める“音”。しかし映像と音の乖離は、盗聴という行為そのものだけではない。カメラが固定のまま、登場人物が画面内から立ち去っても、声だけが続くシーン、そこにも象徴されている。その不安定さによる落ち着かない雰囲気が、映画全体を支配しつつ、最後に到って一気に焦点を結ぶときの衝撃。「意外なラスト」を売りにするような映画とは明らかに異なるこの衝撃は、それまでの漠然とした不安感を根こそぎひっくり返し、観る者をさらに強烈で明確な不安感へと叩き落とす、価値観の転倒の恐怖ともいうべきもの。忘れがたい映画である。それにしても、観るたびに思うのだけど、ハリソン・フォードはこの役が一世一代のハマリ役ではなかろうか(→って、それじゃあ彼の出演作は基本的に殆どミスキャストっちゅうことになるやんか)。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2008-02-08 17:45:55) |
3.凄く地味な映画だけど、かなり作りこまれていて良。現在の映画において、音が非常に重視されているのは言うまでもないが、少々音の使われ方が雑だな~と思ってしまうような作品が多数存在するのが現実である。コッポラは、ゴッドファーザーでも見られるように、音の使い方が極めて丁寧で、計算しつくされていてうまい監督である。そんな彼が音に着目して、音の使い方に全力を注いだ本作は映画における音の使い方のお手本的な映画である。題材が題材なだけに、見る者の音に対する集中度が非常に高まるのは必然である。しかし注意深い観客をも完全に納得させうる本作の音の完成度は、モノクロ撮影の技術において映画史に名を刻む第三の男と匹敵すると言えよう。モノクロ撮影のお手本は第三の男、音の使い方のお手本ならカンバセーションとなってもおかしくはないのである。ところがこの映画、脚本まで緻密に練られていると言うのに、知名度において同監督の圧倒的な名作の前に存在感を失っているし、サスペンス物としてもかなり地味なのであまり見られていないのが現状だ。本当に残念なことです。当時のコッポラノ作家としての誇り高い姿勢に9点! 【ジャザガダ~ン】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-11-05 02:26:59) |
2.オープニングからやられた。それからは、ずっと画面から目を離せない状態が続く。いやあ、これは一級品のサスペンスですよ! コッポラは、相当ヒッチコックを研究したのでは? キャスティングが抜群。G・ハックマンがこんなにいい役者だとは知らなかった。H・フォードが強烈な印象を残す。ラスト・シーンは、人によって見解が分かれるかも。 |
1.好奇心と猜疑心の捩れた融合が生んだ隠れた名作だと思う。コッポラの脚本とジーンハックマンの渋い演技に脱帽。ラストシーンでのハリーのサックス吹奏シーンと重なり合うように素っ気無くキャスティングが紹介されるところは、実に刹那的で退廃的で…美しい。 |