かぐや姫の物語のシネマレビュー、評価、クチコミ、感想です。

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かぐや姫の物語

[カグヤヒメノモノガタリ]
The Tale of Princess Kaguya
2013年上映時間:137分
平均点:7.19 / 10(Review 113人) (点数分布表示)
公開開始日(2013-11-23)
ファンタジー時代劇アニメ小説の映画化
新規登録(2013-07-23)【鉄腕麗人】さん
タイトル情報更新(2023-05-24)【イニシャルK】さん
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監督高畑勲
朝倉あきかぐや姫/女官
高良健吾捨丸
地井武男
三宅裕司翁(一部代役)(特別出演)
宮本信子媼/語り
高畑淳子相模
田畑智子女童
立川志の輔斎部秋田
上川隆也石作皇子
伊集院光阿部右大臣
宇崎竜童大伴大納言
中村七之助(二代目)御門
橋爪功車持皇子
朝丘雪路北の方(友情出演)
仲代達矢炭焼きの老人
クロエ・グレース・モレッツかぐや姫(英語吹き替え版)
原作高畑勲(原案)
脚本高畑勲
坂口理子(脚本)
音楽久石譲
東京交響楽団(演奏)
作詞二階堂和美「いのちの記憶」
高畑勲「わらべ唄」/「天女の歌」
坂口理子(脚本)「わらべ唄」/「天女の歌」
作曲二階堂和美「いのちの記憶」
高畑勲「わらべ唄」/「天女の歌」
主題歌二階堂和美「いのちの記憶」
製作氏家齊一郎
奥田誠治(製作担当)
スタジオジブリ(「かぐや姫の物語」製作委員会)
日本テレビ(「かぐや姫の物語」製作委員会)
電通(「かぐや姫の物語」製作委員会)
博報堂DYメディアパートナーズ(「かぐや姫の物語」製作委員会)
三菱商事(「かぐや姫の物語」製作委員会)
東宝(「かぐや姫の物語」製作委員会)
高井英幸(「かぐや姫の物語」製作委員会)
島谷能成(「かぐや姫の物語」製作委員会)
市川南〔製作〕(「かぐや姫の物語」製作委員会)
ウォルト・ディズニー・ジャパン(「かぐや姫の物語」製作委員会)
製作総指揮フランク・マーシャル(英語吹き替え版)
企画鈴木敏夫
プロデューサー西村義明
制作星野康二
スタジオジブリ
配給東宝
作画百瀬義行(特任シーン設計)
安藤雅司
小西賢一(作画監督)
大杉宜弘(原画)
森田宏幸
タツノコプロ(作画協力)
日本アニメーション(作画協力)
古屋勝悟(原画)
美術男鹿和雄
編集小島俊彦
録音東京テレビセンター(音響制作協力)
浅梨なおこ(音響監督)
その他スタジオジブリ(提携)
日本テレビ(提携)
電通(提携)
博報堂DYメディアパートナーズ(提携)
三菱商事(提携)
東宝(提携)
久石譲(指揮・ピアノ)
高畑勲(劇場公開時キャッチコピー【ノンクレジット】)
太田光(DVD・ブルーレイ用キャッチコピー【ノンクレジット】)
IMAGICA(デジタルラボ)
種田陽平(協力)
読売新聞社(特別協力)
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19.《ネタバレ》 日本人なら誰でも知っているであろう『昔話』を、この平成の世に、商業劇場作品の題材に選んだ理由を考えてみます。当初私は、巨匠ならではの、いやアニメーターとしての“意地”の可能性を感じていました。宮崎駿監督が専業声優を嫌ったように、アニメーター高畑勲氏は、物語(脚本)に手柄を取られることを拒んだのではないかと推測したのです。監督が最優先したのは、アニメーション表現におけるオリジナリティや芸術性。そう訝しんでしまうほど、本作の映像製作は採算性を度外視した特殊なものでした。監督のアニメーションに対するコダワリを注ぎ込んだ『名残し』の一作には秀逸な原作など必要無かったのではないかと。しかし観終えて、この予想は大変失礼な見方であったことに気付かされました。素晴らしきは物語性。監督は絶対的な信念を持って『かぐや姫』に命を吹き込んだものと思われます。意欲作でありながら集大成。自身最後の作品で監督が観客に伝えたかったものは、仏教哲学を礎とした人生観でした。なぜ人は生まれるのか。人はどう生きるべきか。そして死が意味することとは。キャッチコピー『姫の犯した罪と罰』は、全ての人間に向けられたメッセージに他なりません。まさか『かぐや姫』で、これほど“人間”そのものに対し根源的なアプローチをしてくるとは思いもよりませんでした。もちろん素晴らしい映像美が、物語をより強く、より深く伝える役目を果たしているのは言うまでもありません。アニメーションは、目的ではなく手段です。ただし、心ときめく無限の可能性を秘めた最高の表現手法のひとつであることを、本作は身をもって証明しています。さすが高畑監督。日本アニメ史に残る傑作を、よくぞ残してくれました。心より感謝いたします。(以下余談)実は、平成最後の日に『平成』にちなんだ作品の感想を投稿しようと思い立ったのですが、『平成狸合戦ぽんぽこ』は投稿済み。『愛と平成の色男』はレンタルショップに在るはずもなし(そりゃそうだ)。というワケで、ぽんぽこ繋がりで本作を鑑賞したのですが、記念すべき日に素晴らしい映画を観ることが出来て良かったです。
目隠シストさん [DVD(邦画)] 9点(2019-04-30 23:59:59)(良:1票)
18.《ネタバレ》 劇場で見よう見ようと思っていたがついつい見逃して、TV放送も録画はしたものの長い間見ずじまいだったがようやく見ることができた。結論。劇場で見るべきだった。いや、でも、TVで見てもその素晴らしさは損なわれることはないに違いない。少し設定を変えてはいるものの竹取物語そのものである。そこ(竹取物語そのままの内容であること)に異を唱える人もいようが、これで良かったと思う。地球で生きることに対して一本芯の通った、やや強気のかぐや姫の設定がまた良い。声をあてている朝倉あきの演技も非常に良かった。また、輪郭線が従来のアニメと異なり、筆で書かれた感じの線になっている。太さや濃淡が一定でない筆線を動画にするのにはとても手間がかかるのは想像に難くない。確か10年近い年月がかかったと記憶しているが、それも致し方ないと感じた。それだけ年月をかければコストも跳ね上がるのは当然で、トータルで赤字になってしまうのは正直かわいそうだと思う。長い時間がかかっても正当に評価されることを切に願う。
MASSさん [地上波(邦画)] 9点(2016-02-11 13:46:00)
17.《ネタバレ》 素晴らしい。この竹取物語という日本人なら誰もが知っている日本最古の物語を現代に甦らせた本作は、アニメのみならずここ10年の間に製作された全ての映画の中でも歴史に残る傑作と言ってもいいくらいの素晴らしい出来栄えだった。高畑勲という日本を代表する映画作家は、この平安期の日本に古色蒼然と埋もれていたかぐや姫という女の子をその見事なまでの芸術的才能によって、千年の時を経た現代の日本に活き活きと生き返らせたのだ。水彩画を思わせる淡いタッチの絵の中で瑞々しく躍動する、このかぐや姫ほど魅力に満ちた主人公を僕は他に知らない。光り輝く竹の中から生まれた小さな女の子であった彼女が心優しき老夫婦の元ですくすくと成長していくさまを自然に見せていく冒頭部分から僕は心を鷲掴みにされた。最初は心優しき翁だった父が都に出てくると、次第にその出世欲と見栄を増大させ、単なる俗物へと変化していくのは、このかぐや姫という物語の本質を象徴している。生きることは、その純粋さを少しずつ穢していくこと――。常日頃からそう思っている僕にはとても共感できるテーマだった。光り輝く魅力に満ちたそんなかぐや姫も都に出たことによって、社会の序列化の波に組み込まれていく。やがて、彼女は男どもの横柄な支配欲――その裏には必ず醜い性欲が潜んでいる――によって、その美しさと純粋さを完全に奪われそうになるのだ。ただ綺麗なだけの着物を脱ぎ捨て、楽しかった生まれ故郷の里山に帰ろうとするかぐや姫(絵のタッチを意図的に荒くして描かれるこのシーンは息を呑むほどに美しかった)だが、男社会の論理はそれを許さない。何とかしてそんな男どもの支配欲に抗おうとするかぐや姫だったが、とうとう帝に見初められることによって追い詰められてしまう。そして、彼女を後ろから抱き締めようとする帝の醜い支配欲…。かぐや姫はその純潔を守るために自らの意志で迎えを呼び、そして“穢れなき”月の世界へと帰ってゆく。だが、そんな俗世にまみれたこの世界でも初恋の思い出や鳥や虫たちの健気に生きる姿、そして父母の情愛という彩りに満ちた素晴らしいものがあると悟り、かぐや姫は涙を流す。不覚にも、僕はこのラストシーンを見ながら涙が止まらなかった。映画でこんなにも泣かされたのは久し振りのことだった。理不尽で醜い現実に満ち充ちたこの世界で、少しずつ穢れていきながら日々の生活を送る僕たち人間の悲哀を象徴的に描いたこのラストシーンは白眉としか言いようがない。そうなのだ。だからこそ、僕たちは物語というものに純粋さ・美しさ・あるいはユートピアを求めていくのだ。それは竹取物語が誕生した千年前も現代を生きる我々でもなんら変わることはない。そんな普遍的なテーマを追求した本作は、近年稀にみる傑作と言っていい。
かたゆきさん [DVD(邦画)] 9点(2015-08-02 16:41:20)(良:2票)
16.翁が欲深いという意見がけっこうあるのにおどろいた。
翁はただただ姫に幸せになってほしかっただけで、やり方を間違えたんだと思う。
最後のシーン、号泣してしまった。子供がいる人ならわかるんじゃないかな。
妹が何が言いたいかわからんと言っていたが、そんな難しいことじゃなく、
幸せは金ではない、というただそれだけでは?と思った。
風立ちぬよりはこっち。
Skycrawlerさん [地上波(邦画)] 9点(2015-04-05 01:46:05)
15. ストーリーの骨格は、たしかに僕らの知っている、あの「竹取物語」。でも、そこで描かれているのは、全く新しい物語です。ここに登場する数多くのテーマは、どれもが大変深遠で、誰しもの人生にあてはまることでありながら、「現代の日本」における僕たちのテーマをビビッドに表現するものです。
 僕がこの映画を見たのは2015年ですが、僕自身は、公開当時の2013年に観ていたら、この映画のメッセージを半分も受け取れなかったかもしれないと思います。高畑監督の、時代の本質をとらえる「敏感さ」に、頭が下がります。
 常識や虚飾をひっぺがす手法として、いにしえの物語を使ったのが、成功しているんじゃないでしょうか。「西洋の物語」が僕たちの思考のデフォルトになってしまう前の時代を舞台とすることで、「今」の僕たちが直面している、根源的なテーマがはっきりと見えてきます。それは、東洋的なものに回帰するということではまったくなくて、フラットに人間を見つめるということ。常識に曇らされた目を、しっかりと開くということ。
 いろいろなテーマがうまく盛り込まれていますが、人間ドラマとしてもとてもよくできていて、今まで「得体のしれない宇宙人」のイメージしかなかったかぐや姫の生き様がとてもリアルに伝わってきて、感動しました。
コウモリさん [DVD(邦画)] 9点(2015-03-23 15:01:43)
14.人物の描画、映像美がすばらしい。ストーリーも夢があってよかった。
ホットチョコレートさん [ビデオ(邦画)] 9点(2015-03-17 06:28:24)
13.なんとなく見始めたら、ヤバいくらい引き込まれた。かぐや姫を中心にした小さなエピソードが次から次へとテンポ良く続くんだけども、その一つ一つのエピソードの演出力が半端ない。かぐや姫はもちろんどの登場人物もキャラが立ってて魅力的だし、淡々と進むくせに不思議なスケール感のある話が甘すぎず辛すぎず絶妙に良くて、絵もオリジナリティ溢れていて新鮮。もうどっぷりこの世界に浸かったところであのラストを迎えるもんだから、最初からそうなることは分かってても切ないこと切ないこと。高畑監督ってすごいパワーあるけど力み過ぎて打ちそこなうバッターみたいなイメージがあったけど、この映画は一直線にすっとんでった場外ホームランでした。そんな高畑監督の会心の一打を見れたことがうれしいです。
54dayoさん [地上波(邦画)] 9点(2015-03-13 23:39:44)(良:1票)
12.日本有数の有名昔話を行間を埋める形で再構成しているわけですが、なかなか心を打たれます。何者にも縛られず自由に生きたい、好きな人達といつまでも共にいたいという気持ちと高貴な姫君として扱われる現実のギャップに悩む主人公に共感できます。実際、有能さのために生き方を縛られる人がいると思います(私のような凡人には贅沢な悩みですけど)。別れは最初から分かっていても悲しいものですね。月の住民の、話の通じなさぶり・空気の読めなさぶりが却って沈痛さを増したといいますか。(追記)墨絵のような絵柄はお金がかかっているはずですが、物語に入り込んだおかげか、10分程度で気にならなくなりました。
次郎丸三郎さん [DVD(邦画)] 9点(2015-01-12 14:59:22)
11.期待した以上によかった、絵もよかった
マンデーサイレンスさん [DVD(邦画)] 9点(2015-01-09 22:41:32)
10.《ネタバレ》 これは単に闊達な少女の喜怒哀楽や生き様を描いただけの娯楽作品ではない。人間の本質とは何かを問う、高畑勲の人間観を世に突き付けた作品だ。高畑がこの作品を通じて強調したのは、人が自由を求める心、欲望、極端に言ってしまえば「煩悩」の肯定である。この映画には幾つもの高畑解釈・オリジナル要素が挟まれているが、つとに「友達と野山を駆け巡った幼少期の楽しい思い出」が姫の心、作品全体を支配する。姫の「自由への渇望」を強調するためだ。籠の中の鳥となった姫は、終始人の世の煩悩に振り回される。養父の上昇志向、男達からの求愛、そして帝に迫られる(男の直接的な煩悩に触れる)や、ついに現世=地球での暮らしを疎ましく感じてしまう(この時の姫のゾッとする表情がまた秀逸)。これが月の世界=極楽浄土帰還のスイッチとなる。月から迎えに来る王が釈迦の姿をしていたりと、仏教義への痛烈な皮肉が垣間見える。煩悩にまみれ穢れた人の世=地球に憧れた罪により、人の煩悩に苛まれて生きる罰を与えられた姫は、しかし最終的に自らの煩悩を肯定する事になる。男達からの求愛を尽く退けてきた姫が唯一グラついたのが「駆け落ち」の勧誘だった。「ここではないどこかへ行き二人で暮らそう」との言葉に、自由を求める姫の心は一瞬揺らぐが、それまで姫を肯定し続けた養母に珍しく阻止される(これは駆け落ちなど大概上手くいかないという年長者からのアドバイスであり、倫理観によるものではない)。しかし幼馴染みのイケメン青年と再会するや、彼が妻子持ちであるにも拘らずあっさり駆け落ち宣言。もちろんこれは幻想に終わるが、姫は初めて女としての欲求を素直に表現し、不倫という不道徳な願望=煩悩を抱いた。「人の世は穢れてなどいない」と力説する姫の言葉は、高畑自身が叫ぶ人間賛歌ではないだろうか。自由を求め、欲求を抱く事こそが人間の本質である、と。こうして原文「竹取物語」にて描かれていない姫の「罪と罰」を明確にした点がこの作品のテーマであると同時に最大の見所・魅力である。
にしきのさん [映画館(邦画)] 9点(2014-02-19 02:44:10)(良:1票)
9.《ネタバレ》 この「かぐや姫の物語」は、「ナウシカ」や「ラピュタ」に拘ることをしなければ、
正に「ジブリの最高傑作」といえる内容だったと思う。
西洋ファンタジーが好きな自分としては「ナウシカ」「ラピュタ」の方に軍配が上がるが、
後期ジブリアニメ勢の中では紛れもなく最高傑作であると思う。
アニメの原点に立ち返り、高畑勲のテーマでもあるだろう古き良き日本の美というものを見事に観客に伝えている。
線や絵はジブリらしくないが、見事に「ジブリの原点回帰」を果たした作品だと思う。
正直、宮崎駿の集大成「風立ちぬ」は(作品としてはいいが)彼らしくなく煮え切らず、実はまた宮崎駿は新作を構想中なんだろうなとひそかに僕は思っているが、
高畑勲の集大成「かぐや姫」は燃え尽きた感があり、彼の作品のファンでも納得のいく集大成だったと思う。
平凡な日常の仕草が丁寧に優しく描かれていて感動を覚える。そこに愛があふれているようだ。
日本昔話のような内容ではあるが、そこで勝負した結果彼の才能が前面に出たと思う。
絵の細かいところは省いてあるが、筆の強弱で感情や動きが表現される。
これが効果的で、誰もが楽しめるアニメは絵を細かくすればいいとか、
色をたくさん使えばいいとか、そういうのとは程遠いところに答えがあるのかもしれない。
このアニメーションの美しさは「沢山のスタッフを使って豪勢に作ればいい」とかいう次元のものではない。
そして監督の作品に対する愛情が伝わる。「風立ちぬ」よりも。
「風立ちぬ」よりも「アニメで表現できることは何か」をよく考えられていると思う。
淡い色遣いの中に激しく感情揺さぶられたり儚かったりいろいろなものが込められてるが、あくまでもシンプルであるというのが良い。
シーンのいくつかのぶつ切り感はあったと思うが作品のクオリティに変わりはない。
しかしほんとに高畑勲監督と宮崎駿監督はライバルなんだろう、
宮崎駿「風立ちぬ」のタイトルに「の」が入ってないと思ったら、
高畑勲の「かぐや姫の物語」にはちゃんとタイトルに「の」を入れてきた。

最後の最後で高畑勲は宮崎駿を大きく超えてきたようだ。
ゴシックヘッドさん [映画館(邦画)] 9点(2014-02-13 21:05:11)
8.《ネタバレ》 エンドロールまでが作品。急に成長するかぐや姫、その成長のきっかけがいちいち日本の美点。育て親もその点を涙ながらに喜ぶも、その喜びを再度、エンドロール直前で思い出すとは。良いと思っている時代に戻りたい、そんな思いが届かず、しかし残っていてほしいと願う姫のはかないものがたり。はかないとここに書きながら、はかないと自身を思えることってそう無いよね。傑作。
元祖さん [映画館(邦画)] 9点(2014-01-31 23:02:35)
7.《ネタバレ》 いやこれ完全に傑作でしょう。単純なストーリーなどではなく、言いたいことを読みとるのが楽しい系の映画。ぜひ原作(という呼び方で良いのかこの場合?)を読んでから観ていただきたい作品です。本作の構成の上手さがわかります。ストーリー自体はほぼ原作通り、①翁が竹からかぐや姫を発見、育てる②5人の皇子と帝がかぐや姫に求婚する③月に帰るという3本柱ですが、本作はこれにプラスしてかぐや姫が成長する過程が描かれる点が原作と大きく違う。すなわちかぐや姫が山での暮らしで自由や喜び・楽しさ・愛を知る描写。しかし都に出るとそれらは一転、自由が無く、喜びも楽しさも愛すらない現実の辛さを思い知る。小さな庭を作ったり「じっと我慢すればいずれ春が来る」と信じたが、所詮は誤魔化しに過ぎなかった・・・。

 「姫の犯した罪と罰」というのがキャッチコピーというのは鑑賞後に知りましたが、なるほどものすごく納得しました。かぐや姫はかつて月で「地球に好奇心を持つ」という罪を犯した。それゆえ「地球で生きる」という罰を受けた。何も思い悩むことのない無色の月で生きず色どりあふれる地球で生きることがどんなに辛く苦しいことかをかぐや姫に思い知らせること、それが罰だった。

 しかしそれでもかぐや姫は地球で生きたいと願った。どんなに辛く苦しいことがあろうと「生きていたい」と願った。

 最後のシーンの羽衣がかけられた時のかぐや姫の一瞬の表情の変化と、背景が白黒になる描き方は素晴らしかった。「色どり」から「無色」へ。感情を失ったにも関わらず最後にかぐや姫が流した涙にこそ、この映画の言いたいことが込められていると思います。
 ・・・と、なんか感想じゃなく考察(しかも浅い)になってる気がしなくもないですが・・・とにかく、素晴らしかったです!
53羽の孔雀さん [映画館(邦画)] 9点(2014-01-29 23:10:48)(良:1票)
6.《ネタバレ》 竹取物語のストーリーはうろ覚えだがもちろん知っている。何をいまさらアニメにするのかと、半信半疑で観た。観終わって、私が知っている古典のほうは、こんなにも生きることと死ぬことに肉薄した内容だっただろうか、と驚いた。近年ない感動だった。風立ちぬ本編の前に流れたこの作品の予告編で不覚にもぼろぼろ泣いてしまったが、それがなければおそらく観に行かなかったかと思う。近くに座っていたうるさい子供も「かぐや姫の死」(と私は捉えた)にはさすがに黙った。すべての人の心に訴えかける、そういう映画なのだと思う。
よーちーさん [映画館(邦画)] 9点(2014-01-23 18:01:09)
5.《ネタバレ》 アニメーションもここまで来たかという圧巻の芸術性に痺れました。
非オタク向け、非スイーツ向けのアニメとしては最高でしょう。
例えば、美術館に行って絵画を楽しめる程度の、文化的リテラシーがある大人なら間違いなく楽しめる作品ですし、子供が見ても充分面白いでしょう。
あえて減点ポイントを上げるならば、最大の見せ場である月の住人の降臨が、やや期待はずれ。
日本古来の世界観に思いを馳せたいシーンですが、なぜか菩薩が降臨して仏教説話みたいになっているのはかなり疑問ですし、彼らが奏でる音楽も単なる現代西洋音楽なのは興ざめです。
事あるごとにクローズアップされる主人公の歌、琴の音も単なる西洋音楽であり、あからさまにマイナーコードに転調したりすると折角のロマンが壊れますね。監督の意向を受けて作曲しているだけかも知れませんが、ジブリ作品ではたまに音楽がちぐはぐな作品が見受けられ、何も毎回久石譲氏にオファーをする必要はないのではないかと個人的には思っています。
Mum,theSanChrysさん [映画館(邦画)] 9点(2013-12-15 13:33:32)
4.《ネタバレ》 アニメーション、ストーリー、共に素晴らしい作品だと思います。まずアニメーションですが、本作ではかぐや姫が泣きじゃくるシーンが二回ある。一回目は赤ん坊の頃で、二回目は月に帰りたくない心の丈をブチまける場面。姫は思い切り顔を崩して泣きじゃくる。その顔はとても写実的です。しかしその前後の例えば目の間に垂れてきた蜘蛛を寄り目で見つめるシーンや、成長した後の姫はとても漫画的な可愛らしさに満ちている。しかも背景は中国画に良く見られるような抽象的な画です。その写実的表現と漫画的表現、抽象的表現が完全に違和感無く同居している。見せ場でもあろう姫が宴を飛び出し野を駆けるシーンの疾走感も素晴らしかった。
ストーリーも申し分無いものでした。『竹取物語』は元来月の住人である姫と周囲の人間を通して、当時の貴族社会を風刺した作品なのですが、その"身分の差"という点も十分に描きながら、姫を主役にすることでオリジナリティも十分に感じられるものとなっています。新たに付け加えられた要素は"自由"について、もっと限定して言えば"生命賛歌"でしょう。月からの使者の容姿から容易に想像できるとおり、月の世界は謂わば極楽浄土です。老いもなければ苦しみもない。しかし姫は生や死が蔓延る地球に憧れて、罪人としてその地に落とされた。姫は帝から逃げ出す際に月に迎えの信号を発してしまいますが、 捨丸と再会して気づいたことはやっぱり生や死がある世界の方が素晴らしいということ。それは宮内で貴族的生活に辟易していた姫自身も反映している。そして観客も同時に気付いてしまうのではないでしょうか。「辛かったり、楽しかったり、生きたり、死んだりするから人生なんだ」ということに。何故なら誰でも"ここではないどこか"を目指して生きているのだから。現状がどれだけ肉体的にも精神的にも満たされているからと言って、そこに甘んじている事は本当の生の実感には繋がらないでしょう。監督は「今日性があるのかは分からない」とコメントしていますが、人が自由を求める限りいつの時代にも通じるテーマだと思います。
まさか『竹取物語』から話の大筋を変えずにこれだけ深いテーマに到達する作品とは思っていませんでした。
民朗さん [映画館(邦画)] 9点(2013-11-28 02:07:46)(良:1票)
3.子の成長、四季の移ろい、里から都への暮らしの変貌。
その「移りゆき」をモチーフとするアニメーションの素晴らしさは、
かつて高畑勲監督が賞賛したあのフレデリック・バックの『木を植えた男』
からの継承を思わせる。
作中のワンシーンにある、樹々の再生の件などはまさにそれへの
オマージュともいえる。

桜の樹の下で舞い踊る娘の喜び、野や山をひた走る娘の激情が迸るクロッキー風の
タッチ。
生物の営みそれ自体への慈しみが滲んでいる柔らかなタッチ。
その伸びやかで、味わいのある筆致が創りだす画面の躍動は、
動画であって動画を超えている。
(エンディングのスタッフロールでは馴染みのない様々な作画の役職が並んで
興味深い。)

波やせせらぎの表現の斬新と大胆。木々の影が人物の衣類に落ちて、揺れ動く紋様を創りだす様。機織りや演奏などをはじめとする写実的なアクションと、快活に跳ね回り、飛翔する姫のファンタジックなアニメーションの絶妙なバランス。

題材とのマッチングゆえか、今回はその技巧もそれ自体が目的といった感が無く、
一枚一枚のスケッチの丹念な積み重ねがキャラクターに血を通わせている。
ヒロインを回り込むようなカメラの動き、彼女の寝返り、振り返りなどの動作は
スケッチを立体的に浮かび上がらせるだけのものではない。

青い星を振り返る姫の涙が美しい。



ユーカラさん [映画館(邦画)] 9点(2013-11-26 23:59:30)
2.《ネタバレ》 正直、高畑作品は今までピンとこない作品が多かったんですが、これは非常に良かった。日本人なら誰もが筋を知っている竹取物語。凡百の監督ならその題材に気負い込んで、独自の解釈をこれでもかと詰め込んで、別物の話に変えてしまうところですが、この作品は原作の筋をあくまで尊重し、王道的な手法で現代的なストーリーに昇華させています。その勇気にまず拍手。そして監督の解釈による、姫が最も感じたかったこと=生命の躍動感は、独特の絵柄と、ジブリならではの繊細な動きを通じて表現され、十二分に味わえました。心配だった役者の声も、プレスコ録りだったので、画に合っており、そこまで違和感はありませんでした(とはいえ背後に役者の顔は浮かびましたが…)。故地井武男さんの声も良かった。姫のキャラクターも素晴らしい。「ジブリ史上最高の"絶世の美女"」のコピーは伊達ではありません。久石譲の音楽もまた、ずるい。最も悲しい/切ないシーンに、あえて最も楽しげでワクワクする音楽を持ってくるとは。これで涙腺が決潰しました。子供の頃から筋を知り尽くしている昔話で、まさか泣かされることになるとは。結果的に「風立ちぬ」との同日公開を断念し、最後まで作り込んだのは、正解でしたね。今年見た映画で一番です。地井さん・氏家さんも泉下で喜んでいるでしょう。海外でも間違いなく受けると思います。
蛇蟇斎狐狸窟さん [映画館(邦画)] 9点(2013-11-23 21:29:47)
1.《ネタバレ》 良かった。実に良く出来た映画です。
丁寧な脚本と作画で誰もが知っている竹取物語をちゃんと感動できる映画に仕上げたと思います。
かぐや姫と姫を取り巻く人々の心情を丁寧に描いた事が一番の功績でしょう。やっと映画らしい映画を見た。
高畑勲監督のわがままを辛抱強く聞いて、無事完成までこぎつけたジブリと日テレにも合わせて賛辞の言葉を贈ります。二階堂和美さんの「いのちの記憶」も最高ですね。
ぴのづかさん [映画館(邦画)] 9点(2013-11-23 14:16:05)
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【点数情報】

Review人数 113人
平均点数 7.19点
000.00%
100.00%
210.88%
310.88%
497.96%
597.96%
61815.93%
72421.24%
82017.70%
91916.81%
101210.62%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 9.22点 Review9人
2 ストーリー評価 7.85点 Review14人
3 鑑賞後の後味 7.37点 Review16人
4 音楽評価 7.86点 Review15人
5 感泣評価 7.42点 Review14人
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【アカデミー賞 情報】

2014年 87回
長編アニメーション賞 候補(ノミネート) 

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