1.好きな人に、自分に振り向いてもらいたいと願っても、叶わない時がある。
既視感はあるものの、すれ違う恋の切なさを、王道・素朴でありながら瑞々しく描き、誰にでも共感し易い恋愛青春モノに仕上がっています。
要の物語は、大人になった主人公の回顧から始まります。この手のジャンルではよく見かける手法ですが、当方30代のおじさんでして程よく主人公世代と重なるんです。リアル世代でない分、昔の自分と比較して見てしまうから、高校生活ってこんなだったなぁとか、そういう懐かしさも呼び覚ましてくれる。
キャスティングも中々良かった。
百瀬役の早見さんは本作で初めて知りましたが、疑似恋愛を続けるサバサバした言動の中でも、時折みせる寂しげな表情が胸をついたし、等身大の女子高生を自然体で演じきれていたと思う。
また、主人公ノボル役のイケテナイ高校生っぷりもハマってた。クラスメートの田辺君はニヤっと笑う表情が気色悪いけど、ああいうタイプ、クラスに一人はいましたよね。
監督さんは本作が長編デビュー?のようですが、岩井俊二に似た透明感溢れる映像も、初夏を思わせるロケーションを選んだ事も、この作品に一番重要なリアリティを出す上では見事な演出・構成だった思います。
ただ、ホオズキの種明かし(特に花言葉の本のシーン)は蛇足だったと思うかな。神林先輩との会話だけあれば、花言葉を知らない方でも察しがつくはずですし、そういう憶測、ボカシ要素があった方が流れ的には良いと思う。
それでも、4人4様の繊細な心情を見せた手腕は侮れません。
そして、タイトルにもなってる“あのシーン"。
劇中では、百瀬が振られたその後について多くは語られておらず、原作とは一味違った着地となってる様子。
あのシーンで百瀬が発した言葉の真意についは、色々解釈できると思うので、ここではあえて明言しません。
ラストのすれ違った女性・・その「もしや?!」に想像を膨らませるのも悪くありませんね。