1.《ネタバレ》 アマチュアのフルートの女の子の出来過ぎた設定とか、ベタベタな演出とかいくつもあるのに、いろんなシーンでポロポロ泣けてしまいました。こういう体験ははじめてで「都合よすぎる設定でもベタでも冷めずに感動するって出来るんだ!」という不思議な発見が出来ました。TEDでコンサートの指揮についての講演があったのを思い出しました。いくつかの名指揮の映像を紹介してくれて、講演のラストに究極の指揮の映像が流されたのですが、それはもうほとんど指揮者は指揮棒を振っていないのです。楽団と指揮者の心持ちが一体化したような中で起きた奇跡のような表情と、その音楽に身を委ねる動き…。この映画を手がけた人達はもちろんそういうのを知っているはずで、この映画でも西田敏行の指揮はそういう感じに近い状況に出来上がってました。紆余曲折あってたどり着いたホールでの演奏で適当に締めくくられるのかと思っていたら演奏が始まって緊張させる展開。まんまとのせられました。で、2日目の展開で「さすがにそれはないわ!」と…あのホールをリハ含めて一日借りるのにどれだけのお金が必要か、昔そういうところに近い仕事経験あるので「その大金たった一人のためにどこから工面するの?!」という現実が覆いかぶさり「うわぁ、やっちゃったよぉ! これで一気に冷めて引いちゃう展開?」と危ぶみました。が、とりあえずまだ終わろうとしない物語を最後まで見守ろうとつきあううちに、会場費の現実をとりあえず気持ちの外に追い出せるくらい、この映画が伝えようとしているところがズーンと入ってきて、シラケることなく泣けてしまいました。この力技すご過ぎ。「きっとあの指揮者は会場費に何か解決策を持ってるんだ」とこちらで脳内補完してしまいました。もちろん、そういう風にしなくてもいいだけの話の持って行きようがあればあって欲しいですが「お前ら、人ひとりのためにどれだけ本気で全力で音楽(自分で選んだ仕事)やれるんだ?」「命かけてんのか?」みたいなところを訴えかけられてガツーンと来ました。演奏家の知り合い2人いますが、私生活をよく知るわけでもなく、立派な服着て演奏する楽団のひとりひとりの実生活についてもふと考えさせられました。