1.《ネタバレ》 自分は刑務所を舞台とした映画が好きなのですが「その中でも一番のオススメは?」と問われたら、数多の有名作品を押しのけて「プリズン・フリーク」と答えてしまいそうですね。
そのくらい好きだし「もっと多くの人に観てもらいたい」と思わされるような、隠れた傑作と呼ぶに相応しい品なのです。
何と言っても、この映画の画期的なところは、刑務所映画であるはずなのに、観ていて嫌悪感を抱くような悪人が、一人も登場しない事ではないでしょうか?
勿論、法律上は囚人というだけでも「悪」でしょうし、主人公のジョンにしたって善人とは言い難いキャラクターなのですが、何処か愛嬌があって憎めないのですよね。
それは囚人同士の殺し合いを賭け事にしている看守達にも、黒人差別主義者の囚人のリーダー格にすらも当てはまります。
こうやって改めて文章にしてみると「いやいや、こいつら完璧に悪人じゃん」と我ながら思うのですが、いざ映画本編を観れば、やっぱり親しみを抱いてしまうのです。
中でも、こういった映画では憎まれ役になる事が多い「主人公達を狙っている同性愛者の囚人」が、妙にチャーミングだったりするのだから、まったくもって困りもの。
見た目は太った黒人男なのに、まさかまさかの劇中のヒロイン格ですからね。
人は見かけで判断するもんじゃないなぁ……などと、しみじみ感じました。
脚本も非常に凝っており
「刑務所のルールその1は『絶対に他人を信用するな』」
「キミはもう家族みたいなもんだから」
「ここから出られるのは、死んだ時だけだ」
などの台詞の数々が、伏線として綺麗に回収されていく様は、実に気持ち良かったです。
それでいて難しく考えながら観る必要は全く無い、というバランスも素晴らしい。
途中で「あれ? 何か急に台詞が説明的になったな?」と不思議に思っていたら、ちゃんと後で、その理由が解き明かされたりするんですよね。
なので観賞後に何かが引っ掛かったような気持ちになる事も無く、後味もスッキリ爽やか。
特に好きなのは、ラストの車中にて、ジョンとネルソンが和解する場面ですね。
一度は殺し合いすら演じた二人が、たった一つの曲を通して「偽りの友達」から「本当の友達」そして「家族」へと変わっていく。
その数分間が、何とも微笑ましくて、観ているこちらも一緒に歌い、一緒に笑いたくなってきます。
とても楽しい映画でした。