5.《ネタバレ》 真面目なのかコメディなのか紙一重という社会風刺コメディですが、
この監督のコメディといえばほとんどが下ネタに頼らず、
上品にきわどい風刺もバサッと冷酷に切り捨てたり、
本当にわかりやすいギャグもありますが、
シェークスピアなどの文芸の知識もいるという、
わかりにくいのにそれでも笑えるのは正統派のコメディだからでしょう。
よく本が出てきますが別に賢さを映画で見せようなどという俗なものでもなく、
その時代では映画の中に映画を出せない(影響は本から)という時代。
そこが安っぽくないのです。
特にこの作品では後々のスパイ映画によく使われているような、
本屋の中でのスパイ活動が面白く見事です。
アンナカレリナ・・そしてその本に挿む栞は写真・・
あらゆる媒体からおかしさを追求できる現代のコメディよりも、
日常生活の中からとてつもないバカな設定が生まれるのです。
まずその制作された時代背景を考慮しないといけません。
ギャグとはいえあのヒットラーをあそこまで茶化したことは、
見ている最中でもヒヤヒヤして笑えないくらいの緊迫感。
コメディなのに後半の大山ではもうドキドキもので、
本物のヒットラー(あくまでも映画の中で)の訪問した劇場で、
初めての主役を渡されたのは私がこの監督作でお気に入りの、
「桃色の店」のJ・スチュワートのよき友役、
「ニノチカ」のロシアの同志役フェリックス・ブレサート。
それもヴェニスの商人のあの役だった・・(大笑)
さてラストのオチを私たちはどう取りましょうか?
私はブラックに取って、
おまえの演技は観たくないんだよ!
と取りました(爆)
おかしすぎるよなぁ・・
素人のような大根役者が演じる最初と最後のシーンの絶妙さ、
その大根を演じる俳優は本当にうまいのです。
本当に怖いのはヒットラーなのか?
それとも彼女なのか?
それとも大根ゆえ受けない演技の役者役なのか?
恐ろしいくらいよく出来た作品。
ヒットラーの命令を喜んでゲシュタボは聞くから、
航空機から(ジャンプ)と総統の言われるまんま飛びます飛びます。
ドレスを着たヒロインは収容所でスポットライトを浴びたい役。
こんなギャグを戦争のさなかに撮るルビッチって・・