1.《ネタバレ》 木下蓮二と木下小夜子夫妻による短編アニメ「ピカドン」。
原爆の惨禍をセリフを一切挿入せず、映像だけで語りつくした作品。
とにかくこの作品、原爆が落ちるまでの平和な日常からして不気味な静けさに包まれている。
刻々と「あの瞬間」まで時を刻んでいく時計、家から学校や仕事場に向かうため外に出て行く人々、紙飛行機で遊ぶ子供。
爆弾は横向きに音も無く落ちてくる。それをふと見上げた瞬間、一瞬強張ったり呆然とする顔、顔、顔をした人々を猛烈な閃光によってすべてを焼き尽くす。
熱線によって赤子に乳をやる母親が一瞬にしてドロドロになり、肉塊と化す瞬間。爆風によって髪は逆立ち、建物も人間も何もかも薙ぎ払う。
破壊された街を、皮膚がズルズルに溶けた人々が水を求めてさまよい、斃れ、次々に死んでいく様子の地獄絵図。
たった数分に凝縮されたあの日の地獄。これだけで戦争の恐怖は多大に伝わる。
この作品は、最後に高層ビル群が並ぶ「現代(1978~1979年当時)」を映し、雲の上から傍観するように飛ぶ紙飛行機を映して物語を締めくくる。あの紙飛行機は「誰」が飛ばしたものなのだろうね。
そこに絶望を見るか希望を見るかは貴方がた次第です。