1.《ネタバレ》 続・「ドクトル・マブゼ」。
ラングがドイツ時代に撮った最後の作品で、ラングのサスペンスフルな活劇とオカルティックな演出が凝縮された傑作だ。
ラングはアメリカ時代の方が完成された監督だと思うが、やはりドイツ時代のラングも超凄えぜ!
BGMを極力使わずとも保たれる緊張、無駄なセリフを使わずとも意図が手に取るように解るサイレントの呼吸、加えてラング特有のドロドロとした恐怖演出。
残留思念、亡霊、“魂”!
2時間の長さを感じさせない映像作り。
まずは何といっても、あのファースト・シーン。
工場の轟音が響く密室、拳銃を握り締めた怪しげな男、そして部屋に入ってくる男たち。
映像によって語られるこのサスペンスと緊張。
密室、脱出、襲撃と爆発。この完璧と言っていい7分。そして次のシーンにまで繋がる10分間!
一体男に何が起こったのかを探る警察たちの捜査、その裏で交錯する様々なドラマ、そして“ドクトル・マブゼ”の不気味な存在。
これはサイレント映画の傑作「ドクトル・マブゼ」を見た方がより楽しめるだろう。
刑事のオッチャンが時計まで使って情報を掴もうとするシーンはシュールだ。ラングがたまに見せてくれるこういうユーモアが大好きです。
そしてラングの十八番、終盤の畳み掛けもまた見事な事。
アパートでの攻防、密室からの脱出と取り調べの交差、煙突が1本ずつ倒れながら大炎上する工場、クライマックスの追走劇。
派手なチェイスではなく、猛スピードで通り過ぎる木によってその迫力を語る。良いねこういうの。
マブゼの残留思念に踊らされる幾多の登場人物たち。ラストはもう少しインパクトが欲しいという人もいると思うが、俺には“悪夢”から解放された男と亡霊同然になってしまった男の強烈な対比だけで充分すぎる。
扉が閉まると同時に幕を降ろすエンディングも素晴らしい。ラングが好きで良かった。こんな凄い映画にまた出会えたのだから!