1.《ネタバレ》 これは傑作です。
再見する機会がなくて残念ですが、今でも私的ベスト1と言える作品です。
民族や宗教の違う人たちが心を合わせて暮らしていく難しさ・大切さを、
若い彼らの初々しい恋を軸に優しい眼差しで描き出しています。
監督は51歳という若さで急逝して、こんな素晴らしい作品がもう見れないのかと思うととても残念です。
たくさんのエピソードで民族や宗教や環境の違いを描き、若い二人の交際も宗教が違うからと反対されます。
耳が聞こえないから話せないマヘシュの綺麗で真っ直ぐで純粋な眼差しと表情。
見るだけで、言葉はいらないほどの想いが伝わってきます。
ムルーのあの美しいピアノと歌声はマヘシュへは届きません。
あんなに切なく「あなたに恋をした」と歌っても、メロディーは伝わらない。
でも、ピアノを弾いてるムルーを見つめるマヘシュの眼差しに胸を打たれました。
二人の他にも、出場者に選ばれたマレー系のハフィズという男子生徒のお話も
考えさせられました。
母子で暮らしてきたけど、母は重い病気で入院中。
病院での母との会話、ライバル(と相手が勝手に思ってる)の中華系カホーとの絡みなど、
各々の環境と心情も丁寧に描かれています。
理不尽な叔父さんの死も、いくらでもメッセージを盛り込めるところを
女たちの涙で淡々と描写しています。
全編通して、決して泣かせようとしている演出ではなく、どちらかというと温かいユーモアに満ちているのに、
自分でも知らないうちにずっと泣いていたらしく、終わってからトイレで鏡を見たら目が腫れててビックリしました。
今もすべてが鮮やかに甦るほどの感動作です。