1.《ネタバレ》 この映画はぜひ観たほうがいいと思う。長所も短所もむきだしにしたバリモア演じる母親がじつに素晴らしかったので。彼女が演じる母親はいわゆる「できちゃった結婚」で仕方なく母親になった女性。彼女は望みもしないのに生まれてきた自分の子供に夢を邪魔をされることと、社会的弱者の夫に嫌気がさしていた。つまり自分の夢を持っている向上心旺盛なこの母親は、不幸な夫や子供にいつも足をひっぱられているとずっと思っていたのだろう。 「私はもしかしたら義務感で家族を愛しているのではないか?」と親友に打ち明けたバリモアの心の苦痛を表した台詞に感動した。これこそが本当の人間の姿だと思う。母親だって人間─。そして人間は弱い。多くの欠陥を抱えながら生きている。 母親だからといって当たり前のように無条件で子供や家族を愛しているわけでもない。いろいろな悩みがある。 バリモアはそういう母親を見事に演じきった。 そして息子はそんな母親を目の前にしてポツリと自分の心情を吐露する。「僕のせいで母は自分の人生を犠牲にした」と。 しかし母親は最後に息子にこういった。「私はあなたに自分の夢を邪魔されたと思ったことは一度も無い。あなたがいたからここまで頑張ることができた、ありがとう」と。 本心だと思った。 こういう言葉は、15歳で子供を持った母親のときには気がつかなかったと思う。長い年月を重ねてはじめて言えた台詞だ。「サンキューボーイズ」と。 それはつまりこの映画のタイトルであり、彼女が描いた小説のタイトルでもある。 ちなみにボーイではなくて、ボーイズであることが一番大事なポイントだと思う。つまり彼女が感謝する対象は息子だけではなく、あの駄目な夫まで含まれていると想像する。 とても濃密な人間ドラマだったので高く評価したい。