1.《ネタバレ》 驚いて~いますか~急にた~びに~でたこと~
本作、原作の後宮小説共それぞれに良い!原作の設定からして完全なフィクション
である本作ですが、国を子供、皇帝の正側室の詰める後宮を女性、そこに続く隧道=
タルトを子宮に例え、後宮での宮女達への教育を通して、この架空の皇国における
女性の在り様を単純且つコミカルに、それでいて架空であることを雲散させる程誠実に
伝えています。勿論アニメなのでその時点で不可能だという方もおられましょうが・・・。
そして純朴な学者であり、主人公の良き理解者であるカクウト先生の話運びから漂う
老紳士の情け深い思いやり、子供を守る哲学を探求してきたんだという自信に裏づけされた、
男性でありながらも女性を女性たらしめんと努力する心意気に象徴される後宮哲学が
徐々に受け入れられていく安心感。それに殉じ、個性豊かな女の子達がいつしか
母親の強さを発揮し、各人の価値観と葛藤しつつも必死に子供を守り抜こうと奮戦して
剥き出しの精悍さをみせる段に至っては、女性の頼もしさと主人公銀河の生来の健気さが
相まり真綿で心が締め上げられる思いになりました。
特にフェミニストというわけでもないですし、寧ろ本作を観ると逆にとってないか
気になる位です。
なんというかこの後宮哲学の透徹ぶりは細木数子さんの説教すら思い出させます。
また、これがシネマかどうかについては異論もあろうかと思いますが、
細かい定義はさておいて作品として面白い要素があるか否かで判断したいと思います。
独特の世界観を強調する様に、タイトルを「雲のように風のように」としたことで
快愁要素も抜群です!・・・少々いたたまれない気持ちが残ったりもしますが、
そこがまたテーマソングや挿絵の着物等と相乗して、こうした時代、風土設定による
味わいを助けています。その味わいも好き嫌いありましょうが、
個人的には成功と思います。付加要素に目がいってテーマがぼける危険を冒しても、
作品自体が十分訴える力を持っている為、ここは遊んだ方が面白いと思います。
映像化することで世界観まで広がった様に感じられた点も良。
日本ファンタジーノベル大賞のアニメは面白いですね!同じく鈴木光司さん原作で
入賞、「満ちてくる時のむこうに」となった「楽園」も好きです。
正に稀代のファンタジー!タルトばばあの息もつかせぬ罵倒返しに快笑!!