1.《ネタバレ》 ハワード・ホークス最高傑作の一つ。一体このハワード・ホークスという男は何処まで人を楽しませてくれるのだろう。
純粋な娯楽の中に現代にも通じるテーマをねじ込むその心意気。劇中で粉々になる夥しい窓ガラスの雨。
この一枚一枚が現代社会の「ルール」なのかも知れない。それを破壊していったある男の生き様を描く!
女性陣のメイクはサイレント時代の名残か少々濃いが、この妖艶なアイシャドウは暗黒街を照ら“瞳”となり、は本作を彩る最高の華となる。
無駄な音楽と血の描写を徹底的に廃したこだわり。
“滅びの美学”を血の雨で語らないのがこの時代の映画だ。
冒頭の“暗殺”までの張り詰めた5分間、“星”で火をつけるマフィアと警察の対立、抗争の裏で回転する“コイン”の一時の安息・・・最初25分の丁寧な展開はまったく飽きない。
だが「早く何か起こらないかな」と否応なしにワクワクしてしまうのも確かだ。
溢れかえるビールは女の初潮か、流される血の噴水を現すのか・・・。嵐の前の静かな25分間。そして次々と銃声が飛び交う凄まじい抗争の幕開けだ。
マシンガンのようにめくれるカレンダー、凄まじい銃撃戦、ぐしゃぐしゃになる車、疑心暗鬼、騙し合いと殺し合い・・・たった1時間30分の中でこれほどの密度、これほどの余裕。
終始撃ちまくっている映画なのだが、その合間合間で光る人間ドラマの魅力もこの映画を更に盛り上げてくれる。
組織社会での成り上がり、コインのような日常と犯罪の表裏一体の生活、生と死、光と闇。
際限の無い復讐戦は何も産まない。
あるのは果てしない「暴力の愚かさ」がこの映画の根底には存在している。
権力、裏切り、妹にまで欲情する色欲・・・あらゆる欲望に染まっていったトニー。
「THE WORLD IS ROURS!」
「世界は俺の物だ!全ては俺の物だ!!!」
ラスト6分の最後の銃撃まで息を抜けない、ギャング映画の傑作。