1.《ネタバレ》 主人-召使の関係が、あるきっかけで逆転してしまうという、ありがちなストーリーではあるが、この映画の最後では主人-召使という関係すら消え失せてしまう。ジョセフ・ロージーの映画は、まず画面を覆う暴力的な雰囲気に圧倒される。とても同じ空気を吸っているとは思えない、突き刺さるように陰鬱な場所にしかし登場人物たちは抗う事を忘れて誘われていく。「召使」におけるその陰鬱な場所はあの屋敷であり、縦横無尽な撮影の為に作られたかのような室内の、グロテスクとしか言いようのない空間、そしてそれを分断する幾つものドアが、とにかくドアが怖い。こんな恐ろしい屋敷にダーク・ボガードみたいな奴を雇っちゃマズい。その上彼の相方であるサラ・マイルズの畸形的な性的魅力が加わる。唯一地味な存在であるウェンディ・クレイグがどんだけジェームズ・フォックスを引きとめようとも無理というものだ。しまいには彼女も負の連鎖に巻き込まれる(しかも自分から)。確かに、余りに救いのない展開には思わず辟易してしまうのだけど、人物が次第に主体性を失っていくプロセス、というより場所が彼らを次第に侵食していくプロセスは何度でも見たいと思わせる。