1.《ネタバレ》 あえて金子みすゞを対象として選ぶのであれば、彼女の言語感覚や観察力はどこで磨かれ、また日常生活の中でどのように表れていたのか、大正末期や昭和初期という時代背景の中で、地方の一般人にそれがあるということにどのような意義があったのか、といった点が当然に気になるところである。しかしこの作品は、それが金子みすゞであると分かるのは、ところどころ挿入される詩文の朗読だけであって、それ以外は、どこかで見たようなホームドラマのつぎはぎシーンが、手クセ全開のデタラメな脚本と演出で垂れ流されるだけ。見ていて怒りすら感じました。つまり、制作者には、金子みすゞという稀有な人物についてその人生やその才能に迫ろうという気概も信念もなく、単に人目を引きそうなネタとして彼女を利用しただけなのです。唯一、みすゞが最後に階段を上がって以降2階を一切映さなかったところに1点。もっとも、その後の陳腐なシーンでぶちこわしですが。