8.《ネタバレ》 冒頭数分、特異な映像による戦闘シーンには引き込まれた。絵画的な撮影も、ポーランドの建築物のフォルムと相まって美しい。これは傑作か?と身を乗り出したが……残念ながらどんどん失速し、結局は監督の他の実写作品同様、悪い意味で学生の実験映画レベル(いや、それ以下)の、思わせぶりなだけで中身のない、自己満足映画であった。脚本は撮影時に改変されているのだろうが、それにしても核になるものがなく、酷すぎる。
相棒が残飯のような飯(まさに餌)を汚らしく食べながら喋るシーンが異様に長く嫌悪感を感じ、反面、ヒロインが飼い犬に嬉々として豪華な料理を作ってやるシーンの無駄な華やかさ。この異常なバランス感覚で、ドラマの緊張感も先の展開への興味も何も、全て消えてしまった。この監督の他作品を観る限り、犬に対する偏愛が特徴なのだろうが、少なくともこの映画の中で何の必然性も感じられない。
ラストも、少女の意味深で思わせぶりな笑い顔のアップで終わり。結局全てが思わせぶり。中身がない。
映像、役者、CG技術など映像は良いだけに、勿体ない。
このくらいの予算があれば、才能ある学生に撮るチャンスを回したほうが、面白く野心的なインディペンデント映画が出来るのではないか。