1.《ネタバレ》 『虹男』と言えばDVDのパッケージにも使われているゴムのように身体が伸びる不気味な男がフューチャーされたスチール写真が有名ですが、はっきり申しましてこの映画にはこの不気味な男はもちろん「虹男」すら登場しません。ほとんど詐欺です(笑)。パートカラーながら邦画で初めてカラー映像を使ったとして映画史上に名を残している作品です。原作は推理小説の大家だった角田喜久雄の新聞連載小説だそうです。人口の虹(なんじゃ、そりゃ?)を研究している科学者がいまして、その博士の周辺でおきる謎の連続殺人事件というのが基本的なストーリーです。お話しはほとんどがその博士の自宅で起こる事件なのですが、その自宅がいかにも本格推理小説らしくおどろおどろしい洋館なので笑っちゃいます。被害者たちはなぜだか殺害される直前に虹の幻覚を見るのですが、その幻覚だけがカラーなのです。オリジナルのカラー映像は失われていて、いま観れるのは関係者の記憶をもとに復元したものだそうですが、単なるスペクトル分光の映像みたいなものが1カット5秒ほど映されるだけで、あまりにもチャチなのであっけにとられてしまいました。殺される役者たちの「虹男だー」と絶叫する芝居がまた臭くて時代を感じさせます。メスカリンが混入した飲み物が幻覚をおこさせるという説明ですが、そもそも犯人が何でそんな手の込んだことをするのかは謎です(笑)。いちいち説明するのが難儀なのですが、簡単に言うと江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズみたいなムリやりなプロットとトリックだと思います。唯一の取り柄はあの伊福部昭が音楽を担当していることで、けっこういい雰囲気でした。 いくら終戦直後の製作とはいえ、これでは怪作と言うほかないですねえ。なお一部の資料では円谷英二が特撮を担当となっていますが、本作には関わっていないみたいです。