1.《ネタバレ》 見た目の話だけをすると、ドイツ版『悪魔のいけにえ』、ただしチェーンソーは出て来れどレザーフェイス的なのは出て来ない。グロ描写も総じて超チープなスカタン(量は結構多いけど)。展開運びも全体的に相当に訳ワカメで、単純に映画として観る場合の価値は決して高くない(頭に火を付けるウド・キアーが多少ユニークなくらい)。
真の問題・論点はやはり、無辜の東独移民を西独民が無差別に虐殺しまくると言うテーマ部分のインモラルさであろう。ドイツの東西統一直後の作品ながら、本作には東独民に対する純粋な憎悪(彼らの西への流入によって雇用が奪われることへの理性的な批判であるとか、分断された民族の同族嫌悪的なエクスキューズだとかを感じさせない、ゴキブリに対するかの様な根源的で救い様の無い感情)しか感じ取れない。本作のグロ描写は、シンプルにグロ映画が好きだから映像的にチャレンジしていると言うよりは、本当に東独民が憎いが故に奴等を挽肉にしてやりたいという意味で挿入されているのであり、だから描写のチープさはある種問題の外なのである。
何故、シュリンゲンズィーフは本作をここまでラディカルに撮ったのであろうか(売名行為ならばまだ「救い」はあるが、本気でやっているなら間違い無く彼は病気だし、彼を生んだ西ドイツ映画界・社会も病んでいるのだと思う)。放送禁止系の映画としては、ある意味で稀代の一作。