1.・登場人物は胸の内をベラベラと口頭で説明し、感情が高ぶると目ん玉ひん剥いて絶叫。
・社会問題への言及が始まると一方的な演説大会となり、それまでのドラマやアクションの流れがピタっと停止。
・タイムリミットサスペンスを標榜しながらも湿っぽい人情劇が優先され、活劇としての勢いゼロ。
以上、日本映画の悪いところがこれでもかというほど詰まった作品であり、見ているのが辛くなるほどでした。アクションと人間ドラマと社会派サスペンスという3本柱が調和するどころかお互いが食い合う状況となっており、何をメインディッシュとして考えて製作されたのかがよく分かりません。特に、ヘリ墜落まで1時間を切って以降のチンタラ加減は絶望的なほどであり、「この状況で身の上話をするか?」と呆れてしまいました。原作は未読なのですが、本で読む分には違和感がなかったけど、映像化してみるとおかしなことになりましたという典型的な事例ではないでしょうか。
作品の根幹にある主張は興味深く感じました。反原発でも原発推進でもない、原発の恩恵とリスクの両面を描いている点が好印象であり、福島第一原発事故の記憶も生々しいこの時期において、このような切り口の大作を作り上げた監督と映画会社の姿勢には敬意を覚えます。ただし、原発に係る多面的な考察をドラマやエンターテイメントの領域にまで落とし込むことには失敗しており、その結果、テロリスト達が一体何に憤っているのか感覚的に掴みづらいという状況になっています。
また、江口洋介演じる主人公のドラマとしてもイマイチ。序盤を見る限りでは、家庭に対する責任から逃げ続けてきた男の成長物語のようなのですが、中盤以降は彼の家族が表舞台から姿を消すため、主人公の行動原理がよく分からなくなってきます。彼が家庭の大切さに目覚めたのであれば、大変な目に遭った息子に付き添って病院に行ってあげるべきでしょう。なぜ、彼は息子を奥さんに任せっきりにしてでも現場に残って戦い続けることを選択したのか、その辺りの動機付けが弱いのです。