1.《ネタバレ》 切断された右手が、自らの〝失くした体〟を求めて夜の街を彷徨い歩く姿を独創的なタッチで描いたシュルレアリスム・アニメ。という設定を聞いて、川端康成の晩年の傑作短編『片腕』のように、切断された美少女の片腕を愛でるみたいなフェティッシュな妄想に溢れたものか、あるいは『アダムス・ファミリー』のようにシニカルな笑いに満ちたブラック・コメディだと思って今回鑑賞してみたのですが、そのどちらとも違うなんだかよく分からない作品でしたね、これ。切断された右手のシュールな冒険譚と、宿主である根暗青年が一方的に恋した女性をストーカーしてゆく過程が交互に描かれるのですが、これが正直微妙。とにかくこの主人公の鬱屈した愛情表現が気持ち悪すぎて、もう見られたもんじゃありません。何故に右手に魂が宿ったのかも最後まで明らかにされず、かといってそんなことどうでも良くなるくらいぶっ飛んだ展開があるわけでもなく、また癖になるほど強烈な世界観を有しているわけでもない。いったい何を楽しめばいいのか最後まで分からず、なんとも居心地の悪い作品でした。肝心の右手を切断するシーンもちょっと意味不明でしたし。うーん、監督の独り善がり感が際立つ残念な作品でありました。