1.《ネタバレ》 大半の人は知らないだろうが、この映画には一般に売られている90分のバージョンの他に、124分のディレクターズ・カット版がある。この映画は海外での公開後、なかなか国内でビデオ化されなかった時期があった。その頃にこのバージョンを元にして、ワープロ文字の字幕を入れた「裏ビデオ版」がレンタルビデオ屋で出回っていて、オイラと本作の出会いはこのバージョンでの事。泣けるんだこれが。まあ画質も字幕も翻訳も泣けるんだが、それを吹き飛ばすくらいに内容がよかった。ビデオ版でカットされているのは概ね屋外の寒い風景のシーンと丁寧だが淡々と描かれる家庭教師シーン。あまり本筋には関係ないわけだけど、実はこの二つがないとそれほど泣けないのを、正式版のビデオを見て即座に気付いた。何としても教え子がアイスホッケーの試合に行くのを止めようとする、ウォーケンの静かな激しさは、平凡に積み重ねられていく家庭教師シーン/そこから生まれる師弟の信頼関係なしには理解できない(でないとただのお人好し超能力者に見えてしまうはず)。「自分の人生を壊してまでもやり遂げなければならない事があるのだろうか」というラストのテーマに直結する問いの、中盤での要約だ。今のビデオ版はここの重みが抜けてしまったので、そこからラストシーンに至る主人公の行動に重圧感がない。まるで魔法を見るかのように予定調和な終わり方になってしまっている。そういう想いもあって、残念な公開のされ方をしてる作品だなあと思う次第。124分版なら9点なのだが、ケジメのため点は低くつける。