1.《ネタバレ》 ここでの高評価を見て、私の住む街での公開を心待ちにしていましたが、実際に観てみるまでは分からないものですね。最近の韓国映画は軒並み好きな私ですが、この作品については最後まで面白さがよく分かりませんでした。登場人物、脚本、撮り方全てに違和感を感じました。
まず、登場人物ですが、サンフンに感情移入できないのが最もつらい点でした。それはもう凄まじく暴力的な上に不愉快な男で、早く死ねばいいのにとしか思えませんでした。実際に虐待を受けた方なら共感できる点があるのかもしれませんが、父親はぶん殴るわ、取り立て先を半殺しにするわで最後に死んでよかったとしか感じられず。そもそも、自分の妹を殺し、母親を死に追いやった父親を非難してはボコボコにするくせに、自分は仕事上、散々人を半殺しにしているんだから始末が悪い。「家庭内暴力を受けたものは暴力を振るう」とはよく言われていますが、彼に対して全く同情心が湧かないのが正直なところです。あと、「父親を殺す!」と息巻きながら帰宅し、父親が死にかけているのを発見するや、急に彼を背負って病院へ走るなど、行動の一貫性も皆無。ヨニの弟ヨンジェのラストの豹変っぷりとともに理解不能でした。
続いて脚本ですが、もっと登場人物の関係性を効果的に使う余地があったと思います。例えば、サンフンの姉は異母姉ですが、映画の進行上、特に必要は無い設定ですし、ヨニの父親の状態についても説明不足で(流石に包丁を持って襲われたら病院に入れるのでは?)、何で同居しているのか分かりませんでした。
また、撮り方についても、この作品で手振れの激しい手持ちカメラを使う必要は全く無かったと感じます。臨場感が必要なアクション映画では真価を発揮すると思いますが、本作ではただ観難いだけという印象でした。また、サンフンとヨニのデートシーンを音声なしの音楽と映像だけで表現していたのも、彼らのコミュニケーションが分かりにくく、あまり得策ではない気がしました。
サンフンやヨニの家族と比較して、僕は恵まれた環境で育ったんだなあとあらためて両親に感謝できたことが、この映画を観て一番大きい収穫だったかもしれません。キャストの熱演に4点。