1.悪党を裁く。していることは、メディアの力を利用した「嫌がらせ」。一見もっともらしい主張をするのですが、底が浅い。下調べに、ずさんさを感じます。ムーアが、「人間が呼吸で吐くのは、酸素だろ?」と、ジョークではなしに、まじめに尋ねるシーンがあるのですが、これはムーアの番組を象徴する一コマでした。彼の番組は、おもしろい。このおもしろさは、アニメ「サウスパーク」のおもしろさと同じものです。口にしずらい、米国の根深い社会問題を、下衆な言葉で大声で叫ぶおもしろさです。しかし、最近のムーアはビッグタイトルの受賞が続き、どうも世間、そしてムーア本人が誤解をしているようで、不安です。ムーアの番組は、日本のテレビ番組「電波少年」(初期の)と同じ。彼は、正義のために動いているわけではない。おもしろくて、他人が注目してくれる「番組」を、加減なしに作っているのに過ぎない。正義は、後付けでしかないように思います。それが悪い、ということではありません。本作で取り上げられているトピックについては、知る価値があります。が、くれぐれも「これは米国の娯楽番組なのだ」ということ忘れないように、ご注意を。