1.《ネタバレ》 忍者物の時代劇という位置付けなのかも知れないが、自分としては幼少時に見た怪獣図鑑に載っていたので特撮怪獣映画の扱いとなる。着ぐるみについてはそれなりだが城のミニチュアにはなかなか力が入っており、建築物の倒壊時にはそれ自体が重量をもった木造建築が倒れる感じがうまく出ていた。また個別の場面としては、何といっても塀の上からカエルが黙って覗いていたのがいい出来である。
それから映画の前半で、関門の通過に当たって主人公の正体を隠すため、同行者が難癖つけて打擲してみせる場面はまことに古典的な趣向で時代劇らしいが、この話はすでに「義経記」に載っているので、下手をするとここの門番にもネタがばれてしまう恐れがあったわけである。
ところで唖然としたのはラストの締め方である。自雷也というキャラクターが一国の主として納まるはずがないのはその通りだろうが、それにしても統治の責任を放棄して愛人とともに去るというのは何といういい加減な筋書きであろうか。主人公を助けて死んだ親爺は、彼が近江国を正しく治めることに賭けたのではなかったのか。支配者がいなくなれば民衆はみな幸せ、という発想はあまりに安直で腰が抜けるような思いだった。
一方で登場人物としてはヒロイン役が非常に愛らしい(当時17歳くらい?)のだが、この女優のその後のイメージからすると素直に賞賛するのも憚られる。代わりに村娘を応援するかと思ったら早々に悪人に拉致されてしまい、早く助けないと手籠めにされてしまうのではと心配だったが結局ずっと放ったらかしのままだった。終盤で再登場はするものの、最後はまた放ったらかしになったのも変である。一時はダブルヒロインの重要人物にも見えていたにもかかわらず、この人はストーリー的にどういう位置付けだったのか結局よくわからない。
いずれにせよ最後に釈然としない印象を残す映画だったが、全体としてはまあ付き合い切れないというほどのものではないので、それなりの点数にはしておかなければならないという気はする。