3.《ネタバレ》 内田けんじ監督の他の作品をいくつか観て、その緻密な脚本に感心して注目するように。
そこで、原点ともいえる本作を観てみたけど、ハードルを上げすぎたのかさすがに未熟な面が目立った。
得意のどんでん返し的なものも、面白いんだけどインパクトはそれほど強くはない。
それに、そこにいたるまでが冗長で少し退屈。
他の作品では、謎がありながらもストーリーの流れに乗れて引っ張られるのだが、この作品は謎が必要以上に多くて輪郭がぼんやりしてしまって話の流れに乗っていけない。
恋愛やサスペンス性などの要素で、あまり引き付けられなかった。
ラストですべての謎をすっきりさせたところで、それまでの引っかかりが弱いので、カタルシスも弱くなってしまう。
でも、自主製作のデビュー作ということを考えれば、上出来の部類なんだろう。
電話で校歌を歌って確認するなどところどころに笑いや会話のセンスの良さがうかがえ、才能の芽のようなものは感じる。
ストーカー男が妙な薬を牛乳に混ぜて飲むあたり、主人公と詐欺女の対峙する場面など、見どころはいろいろ。
その後の作品で完成度を増したことをみても、今後最も期待したい監督であることに変わりはない。
役者も素人とは思えないほど味があって良かった。