1.『ハムレット』と言えば優柔不断な王子を思い浮かべますが、これは不透明なハムレットの母、王妃ガートルードを主役に大胆なアレンジを加えた〝中国版〟であり、なかなかド派手で面白い視点だと思います。・・・が、騒々しい音楽をはじめ大部分が過剰に思えます。そして良くも悪くもチャン・ツィイーの起用が作品に多大な影響を及ぼしています。まず良い点として、やはり彼女が登場すると妙な化粧をしていようがしていまいが画面が華やぎます。さすが今アジアで最も勢いのある女優さんです。一方の悪い点としては、ツィイーは傾城傾国の美女としては満点なのですが、権謀術数の悪女にはまだ無理があります。もちろん熱演なのですが、どうしたって威圧感のようなものは欠けますし、サービスカットのつもりなのか必要性が感じられない吹替えヌード(おそらく)な入浴シーンもいただけないですし、官能的であろうシーンも扇情的ではなく、こんな悪女な役でもまだアイドル映画の香り漂います。例えばこれをコン・リーあたりが演じていればもっと違った趣になったのではないでしょうか。それにせっかくの豪華絢爛の美術もしっかり見せてくれません。ただ、ワンとウールアンの憎しみあいながらも心の通じ合いを思わせるような、戦いながらシンクロするアクションシーンはとても美しく一つの見せ場となっています。
ところで「女帝〔エンペラー〕」って跪きたくなるような妙な邦題はどうなんでしょう?そりゃ確かに女帝なんだけどさぁ。