2.《ネタバレ》 寓話はあくまで架空の都市のイメージの中で語って欲しい。
ノーラン版のシリーズとして一貫してはいるが、
そのままストレートに現実を意識させるロケーションや歌唱や、
テーマ語りはやはり安易で浅はかな印象しか与えない。
主要キャラクターそれぞれに見せ場を配分するのもわかるが、
かえってその場面転換がテンポを殺しているのもいただけない。
特に肝心な後半、緊張が高まるべきカウントダウンに向かいながら
4者のパラレルアクションが映画を寸断させ、間延びさせてしまっている。
画面も深度が浅く、表情芝居に頼った人物の対話場面などは
切り返しも配置もフォーカスもことごとく単調だ。
アクションの構図もアングルも貧しく、決死のジャンプシーンにも
絶望的な高低と距離の感覚が出せているとは云えず、
物語を絵解きするのに手一杯にみえる。
巻頭の航空機墜落をはじめ、地盤の崩落、橋梁の倒壊、幽閉溝の登攀、
背骨折り、氷上での処刑とノーランが拘るのは執拗な垂直落下のイメージであり、
その中でタイトルの主題系が立ち上がって来る仕掛けではあろう。
一方で、水平の空間移動をあえて省略してみせるあたりは潔いのだが。
『ダーティ・ハリー』の投げ捨てられる警察バッヂ、『M』の人民裁判、
『機動警察パトレーバー2』の雪降る水路・橋梁爆破の空撮ショットなど、
映画の参照ぶりは相変わらず多彩だ。