2.《ネタバレ》 バリー・ジェンキンスならではの文芸的技巧を堪能できる作品。
流麗なカメラワークが切り取る、くすんだ色の街並みの中に差し込まれる感情を表現する色の数々が、
人種差別の現実に抗う血の通った恋人たちと家族を際立たせているよう。
同時に独特のスローテンポと大胆な省略は今作でも健在で、既存のブラックムービーとは一線を画す。
しかし、今回は複雑な心境を台詞で語り過ぎた嫌いがあり、余白をなくしてしまったことで、
登場人物のより深い苦悩が伝わりづらくなったと思う。
現状が好転することなく、男は女と子供のため、司法取引を受け入れる苦みを含んだラスト。
それでもこの世界に負けまいとする夫妻の愛の強さを静かにたたえる。