6.《ネタバレ》 伊藤潤二原作のホラーマンガシリーズ「富江」の映画化第1作である。現在までの間に映画が8つ、TV番組が1つで計9つの映像作品ができているが、この映画が初の実写化である。
原作通りでは全くないが原作の要素は一応取り入れており、皆で殺してバラして捨てたが学級崩壊というのは原作最初のエピソード、写真をばら撒いた主人公の氏名は「写真」からだろうし、一見わけのわからない結末も「地下室」で、富江が他人の身体を乗っ取った話が背景になっていると思われる。そのようにして作った話の上に、この監督の作家性ということなのか、変に女の子っぽい感じで色づけした形になっている。インタビューでは主演女優が「女の友情」の話だろうと言っており、また監督本人も富江は友達に会いに来たと説明していたのを聞くとさすがに話が違うのではないかと言いたくなるが、まあそれがこの映画の特徴ということらしい。
またこの映画では、前半はわざと富江の顔を見せずに期待感を盛り上げる形にしたらしい。それ自体は別に悪くないが個人的に問題だと思うのは、いざ富江が顔見せすると、どう見ても絶世の美女に思えないので正直落胆を禁じえないことである。当方としては初めから菅野美穂とわかっているので過度の期待はしていなかったわけだが、それにしても何というかいわばボサボサ感のある外観には納得いかない。ただ原作者本人も主に目の印象からこの女優を推していたとのことで、それを聞けばまあ確かにそうかも知れないと思うところもなくはない。
また終盤も何が起こっていたのか全くわからず困ってしまうが、それでもラストの一瞬の映像に唖然とさせられ、空になった頭の中にエンディングテーマがすらりと入って来る流れには妙に納得させられた。キャスティングを含め、最終的にはこういう作りでよかったのだと思わされたのは騙されたような気もするが、しかし単純な怖がらせだけの安手のホラーに比べれば、まだしも一応の映画を見せられた気はしなくもない。