7.《ネタバレ》 設定にはおかしな所が有りましたが、話の展開は非常に面白かったです。
登場人物のキャラクター付けも工夫していて良かったですが、無駄な演出が多い気がしました。
奇抜な演出や映像を撮りたいのならば、映画監督ではなくミュージックビデオの監督や、前衛的と呼ばれる映像作家にでもなった方が良かったのではないでしょうか。
「刑法39条は人権を守る事では無く人権を奪う事では無いのか。」と香深の台詞にあったが、心神喪失者が犯した罪に対しての罰を負うという義務の免除であって、彼等の人権を奪うものでは有りません。
仮にそうなら、彼等が被害者になった時も法による基本的権利を主張できない事になるが、実際はそうでは有りません。
恐らく彼女の言いたかった事は人としての権利ではなく、人としての尊厳だと思います。結論から言えばそれも違いますがここでは書きません。
問題なのは虚偽による悪用や、酒や薬物等による一過性の心神喪失を何処まで認めさせるかという被告人の罪を軽減する為の利己的な拡大解釈だと思います。
また彼女は「精神鑑定は鑑定士の主観である。」と言っていましたが当たり前です。
「だから何なんだ?」って感じです。
裁判自体主観です。
法律や過去の判例に照らし合せても裁判員によって判決は異なります。
人が人を判断したり裁く時点で完璧な結果にはなりませが、それでも人が結論を出さなければなりません。
神様は宗教やお伽話の中にしか居ませんし、タヌキやコオロギが人を裁いてはくれません。
クライマックスでの主人公の一番大きな声での台詞が、私には尽く理解出来ないものになってしまったのは残念です。
刑法39条は社会的弱者といわれる心神喪失者を包括している私達の社会構造の中で必要不可欠なもので、これを否定する事は互助的な社会福祉や社会的倫理観を根底から否定する事に繋がります。
中途半端な問題定義をして底の浅い結論付けをするよりも、あくまで話の要素の1つとしてサスペンスに徹した方が良かったのではないかと思いました。