1.《ネタバレ》 けっきょく、この作品のみどころは、ボリス・カーロフの再生したミイラのメイク、その演技、それを際立てるカール・フロイントの演出ということになる(あと、ヒロイン役のジタ・ヨハンという女優の、奇妙な魅力も、かな)。ひとつこの作品で記憶するべきは、眼光鋭いボリス・カーロフの顔のアップの映像。まあこれは無理に記憶しようと努力しないでも、自然に記憶に焼きつけられてしまうのだけれども、あまりにアイコン的な「フランケンシュタイン」のモンスターとしてのボリスの印象よりも、この作品ではより役者としての力量を感じさせ、他に類のないミステリアスな雰囲気を漂わせている。
ただし、この作品の脚本、そしてストーリーテリングとしての演出にはあまり納得出来ないというか、ただ説明のための場面、そして説明もなく飛躍してしまう展開とのあいだで、観ているわたしはしばし混乱してしまう。そもそも、いちど蘇生したイムホテップが、こちらはヘレンとして転生している元・エジプト王女を、いったいなぜもういちどミイラにしなければならないのか、そのあたりがわからない。イムホテップは王女の再生を望んで、「トトの書」という再生の奥義を記した巻き物を盗もうとして、生きながらミイラにされるという刑罰を受けたのだから、王女が転生してヘレンになってるなら、イムホテップも蘇生して、王女も転生、それでいっしょになってるんだからそれでいいんじゃないの? 説明が多いわりには肝心の部分の説明も描写も欠けている印象。こういう面は、たしかに1999年のリメイク「ハムナプトラ」の脚本はさすがに練られている。